静かなロッカールーム

 

 前回のコラムでは、サッカーにおけるコミュニケーションの重要性について触れたけれど、今回はその続き。

 コミュニケーションの問題がチームを左右していく――。そんな出来事に直面したことがあった。いまから4年前の2010年、レッズ移籍1年目のときだ。

 当時、フィンケ監督のもと、ちょうどチームは世代交代を進めていた時期。ユース出身の山田(直輝)や原口(元気)、ユースから大学サッカーを経由した宇賀神(友弥)といった若い選手を抜擢していく一方で、ベテランと呼ばれる選手たちがレギュラーを外されていた。そうしたなか、“摩擦”まではいかないけれど、ベテランと若手の間でちょっとした“距離感”が生まれていた。

 普通ならば活発に声が飛び交うはずのロッカールームは常にしんとしていた。どちらからも、話しかけようとしない。ベテランが若手に“経験”を伝えたり、若手がベテランに“アドバイス”を聞いていったり…。そんな当たり前のやりとりが欠落していたのだ。

 まさか、いきなりこんな状況を迎えるなんて…。レッズに移籍したばかりの自分に取って予期せぬことだった。チームのなかでの“居場所探し”以前に、チーム全体の大きな難題に取り組まなければいけなかった。

「このままではチームは良くならない。この状況を変えるためにできることはないだろうか……」

 そう考えたとき、僕がまっさきに取り組んだのは、「誕生日会を開くこと」だった。

 

「誕生日会」を開いた意味

 

 実のところ、サンフレッチェ広島時代には、一度もそんな会を開いたことはなかった。そもそも広島ではベテランだろうと若手だろうと関係なく、誰もがいろんな人と話していた。チームをもっと良くするために、もしくは、自分がもっとうまくなるためには、自然と対話が必要だし、積極的にコミュニケーションを取っていた。それが当たり前のことだと思っていたけれど、当時のレッズは違っていた。だから、ベテランと若手との「距離感」をなくすには、まずはチームの空気感から変えないといけないと思った。

 この「誕生日会」の提案には、みんなが嫌々ながらも賛同してくれた。最初に開いたのは5月に入った頃。そこで、4月と5月生まれの選手たちの誕生会を開いた。当初、みんなの反応はいまひとつだったけれど、回を重ねるごとにチーム間で自然発生的に「会話」が増えていったように感じた。

 ピッチを離れた場所でも、チームメイトと一緒に過ごす時間を増やすことで、みんなの心が打ち解けていき、気づいたらベテランと若手の「垣根」は徐々に消えていった。そんなチーム内の変化が表われてきたとき、心のなかで「レッズに来て少しは貢献できたかな」とひそかに嬉しかったことを、今でも鮮明に覚えている。

 

「レッズLINE」開設の裏側に秘める想い

 

 その後も、僕がチームのコミュニケーションアップのための“橋渡し役”となることが多かった。そのひとつが「レッズLINE」(連絡網)の開設。チームの掲示板という位置付けとして、基本的にはフリースペースとしてみんなが使っているけれど、ただ、この開設の最大の目的は、チームメイトとのコミュニケーション! これを大事にしていれば、絶対にチームは良くなる! という想いが僕のなかでのベースにあるから。

 LINEは一瞬で全員に連絡が回って用事が済むから、単純にチームの連絡網としても利用価値がある。気軽に意見交換もできるし、プライベートショットのphotoもupできる。使用目的はさまざまだけど、ピッチ内外のいろんなところで“つながり”を持つことは絶対に悪いことではないはずだ。なにかの縁で、レッズという素晴らしいチームで出会えた仲間なのだから、みんなで「優勝」という高い志を持ってサッカーを楽しみたいと思う。

「サッカー=コミュニケーション」。それが僕の哲学といっても過言ではないだ。ピッチ内外での「コミュニケーション」無くして柏木陽介ではない! そう断言できるほど、僕にとって「コミュニケーション」はとても大事なものだから。

 5月12日(月)はいよいよブラジル・ワールドカップの日本代表一次登録メンバーが発表される。いろんな思いを胸に、メンバー発表の会見を見守るつもりだ。その心境については次回のコラムで紹介したいと思う。ではまた2週間後!

 

このコラムは隔週水曜日に更新されます。

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