さまざまな国のベストセラーをレポートする連載『世界の書棚から』。第2回は超大国アメリカよよりお届けします。世界経済の中心地・ニューヨークで、今もっとも注目されているのがマイケル・ルイスの『The Big Short』。同書が発売されたのは2010年ですが、ブラッド・ピッドら豪華俳優陣が出演する映画が昨年12月に北米で公開されたことで、再度脚光を浴びています。第88回アカデミー賞受賞式では、チャールズ・ランドルフとアダム・マッケイが同映画で脚色賞を受賞。さらに日本では、3月4日(金)より全国ロードショー!! 2016年、日本でもアメリカでも大注目の1冊です。

映画化をきっかけに5年の時を経て再ヒット!
『The Big Short -Inside the doomsday machine-
(世紀の空売り〜世界経済の破綻に賭けた男たち〜)』

2010年から2011年にかけて、ニューヨークを中心にベストセラー各賞を総嘗めにした『The Big Short』。文藝春秋より翻訳版も発売されています。

 本書は2010年に出版され、2015年に映画化された事を受けて昨年から現在に至るまで再度ベストセラー本として各書店の最前列に並んでいます。ニューヨークにおいて、「ベストセラー」と呼ばれるものはThe New York Timesがベストセラーと発表するものを指して言います。各書店の売上等のデータがThe New York Timesに送られ、当該社が「ベストセラー」として選出するものです。本書はニューヨークにおいても、また全米その他の州においても2010年のベストセラー各賞を総嘗めしています*。
 著者マイケル•ルイスはニューオリンズに生まれ、プリンストン大学を卒業後、ロンドン•スクール•オブ•エコノミクス修士課程を終え1980年代にソロモン•ブラザーズで勤務しており、この時の投資銀行での経験も著書に垣間見えます。『世紀の空売り』の他、代表作に『ライヤーズポーカー〜ウォール街は巨大な幼稚園〜』『マネーボール』等があります。

「アルマゲドンの到来」と呼ばれた
世界経済危機の全容が明らかに

 本書が金融という特殊な世界のノンフィクションにも関わらず、ビジネス書という枠を越え多くの層に受け入れられた理由としては、サブプライムローンの破綻に端を発した経済崩壊の全貌が劇場化されている点にあると考えます。住宅価格が上昇し続けることに賭けた者、その信用格付けに疑問を持ち回避できない破綻を予測し賭けた者、双方の思惑が交差していく様子が、段々と朽ちていくサブプライムローン市場と共にスピード感を持って展開していきます。
 金融の専門用語は登場しますが、決して読みにくさを感じさせないのはそのためではないかと思います。著者マイケル•ルイスは双方の立場どちらかに肩入れすることがないものの、新聞の一面には決して登場しなかったサブプライムローン破綻へと導いた市場関係者、賭けに勝ち、巨万の富を投資者に分配したにも関わらず全くその功績の評価を受けなかった者達の存在にも光を当てた所に、ノンフィクション作家としての使命感を感じます。
 サブプライムローンは何故破綻したのか、そもそもサブプライムローンとは何だったのか、「アルマゲドンの到来」とまで呼ばれたこの経済危機の全容を知りたい方には一読の価値のある本だと思います。

*各賞の詳細は以下の通りです。
2010 FT Goldman Sachs Business Book of the Year Award Shortlist
2010 Los Angeles Times Book Prize Winners
2011 Robert F. Kennedy Book Award
Barnes & Noble's Best Nonfiction of 2010
Boston Globe Best Nonfiction of 2010
Christian Science Monitor's Best Nonfiction of 2010
Economic Conditions in the United States
Economic Policies in the United States
Financial Crises
Financial Industries - General & Miscellaneous
Los Angeles Times Book Prize for Current Interest
Publishers Weekly's Top 10 Books of 2010
Salon's Best Nonfiction of 2010
Slate's Favorite Nonfiction of 2010
U.S. Politics & Government - 2000-Present
Washington Post 10 Best Books of 2010

 

世界経済を襲ったリーマンショックの裏側で、経済破綻の危機にいち早く気付いた4人の型破りな金融マン。彼らがウォール街の巨大金融機関を相手に仕掛けた、ある“大勝負”とは――? (C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
3月4日(金)からはついに、日本でも映画公開されます。クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピットといったハリウッドを代表する豪華キャストが集結。
 

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
出演:クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット
監督:アダム・マッケイ
脚本:マイケル・ルイス、アダム・マッケイ、チャールズ・ランドルフ
3月4日(金)TOHOシネマズ 日劇ほか全国公開
配給:東和ピクチャーズ
(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
詳細はオフィシャルサイト http://www.moneyshort.jp をチェック!