どれほどの夢を紡いできたのか、星くずまで売っているような本屋だった_「中央線に残された最後の秘境」「日本のインド」と言われた頃の、眩しい高円寺の物語。

 

ボクは高円寺文庫センターの店長だった。

たった25坪ほどの小さな本屋。ボク以外のスタッフは、バイトくん。

みんなで作り上げた日本一のサブカル本屋。忌野清志郎さんからは「日本一ROCKな本屋」と言ってもらえた。

 

高円寺の情報発信基地になるような本屋、お客さん自身が一週間も来なければ不安になるような刺激的な本屋、そして何よりもボクらが「こんな本屋が近所にあったらいいな」と思えるような街角書店を作りたい、そう思っていた。

出版社の営業さんや編集者にライターさん達が集い、お客さんまでもが飲み会やカラオケにまでつき合ってくれた。サイン会やトークショーに来てくれた作家さんや漫画家さん、ミュージシャンたちまで一緒に楽しんで、再訪を約束してくれる、夢工場のような本屋だった。

家に帰るのが惜しいほど、仕事と思わず一日中本屋にいられた日々の話をしよう。

 

久しぶりに、高円寺駅に降りたった。

駅から北口をあずま通りに向かう横断歩道を渡る。パチンコ屋の喧騒に包まれた路地は昔とちっとも変わらない。

突き当たりには、よく駆け込んだ歯医者が・・・・・・あれ、なくなってる!

右に曲がると、馴染の花屋さんと左にはサブカル感の横溢したレンタルビデオ店「オービス」がまだある。顔を出すのは後回しにして文庫センターはどうなったか見て__。

あっ!「高円寺文庫センター」の看板が下ろされている!

バイトくんたちみんなが気に入った、知り合いの岡本工芸が作ってくれたあの看板が・・・・・・

まさか、三年ぶりに来てこの光景に遭遇するとは・・・・・・この看板は、みんなで作り上げてきた本屋のシンボルだったんだぜ?

 

アタマの中には、アニマルズの「when I was young」が流れる。

Scene.1 清志郎さんがやって来た!ヤァヤァヤァ♪

 

「みんなぁ、ホントに今日はありがとう!

忌野清志郎さん握手会は、限定250名で完売しました!

お客様50名をひとグループにして、店の周囲の辻々5か所に待機していただきます。えっと~その整理に各グループ2名ずつで当たってください。まわりの個人宅に配慮をしてお願いします」

「内山くん、外は頼むな。クロ、伝令頼むよ!」

さすがにテンパってるぞ、落ち着け自分。

 

会場整理に駆けつけてくれた出版社の営業さんや編集者、ライターさん、本屋仲間。総勢10数人、イベント進行の打ち合わせも終えて主役の到着を待つばかりだった。

バンドマンでボクの片腕バイト、佐世保出身の内山くんは清志郎さんに憧れてバンドを始めたのに、店外の指揮じゃ逢うこともできない。申し訳ないけど、ここは彼に頼るしかない。

もう一人の片腕バイト女子りえ蔵は冷静沈着だから、清志郎さんの密着サポートは彼女がいちばん相応しいだろう。おっとりしている、さわっちょはサブに付けた。

でも、まさか清志郎さんが握手会でこの本屋に来てくれるなんて!

そうだなぁ、もとはと言えば、あのときからだったんだな・・・・・・