同じ漫☆画太郎原作の『地獄甲子園』や、続く『漫☆画太郎SHOW ババアゾーン(他)』で脚光を浴びた山口雄大監督が、松山ケンイチを主演に迎えて放つ映画『珍遊記』。「実写化不可能」の呼び声高い問題作にあえて挑み続ける奇才監督に、その胸中を訊いてみた──。

ⓒ漫☆画太郎/集英社・「珍遊記」製作委員会

 ──今回の作品、大きなハードルのひとつでもあった舞台設定についてはどうやって克服を? ロケ地はいかにも中国風ないい感じの雰囲気でしたが。

山口 あれは、韓国で撮ったんです。最初は、森のなかを進んでる玄奘が、遠くのほうに見える街並みを指して「あの街に行きます」って言うんだけど、いっこうに着かなくて山田太郎がキレる……みたいな、街をいっさい出さないプロットも書いてたんですけど、いろいろ考えたら、さすがにそれはないなと(笑)。で、やるなら本格的にやるしかないってことで、撮影期間2週間のうち、最後の3日間だけ、韓国まで行くことにしたんです。 僕としても、「そのへんで撮りました」的なチープさを売りにしていた『勇者ヨシヒコ』シリーズの二番煎じみたいになるのだけは、どうしても避けたいってのがあったんで。

──確かに深夜ドラマでは許されても、大きなスクリーンで観る映画でそれをやっちゃうと途端に薄っぺらくなっちゃいますよね。

山口 そうそう。で、ちょうど前に向こうに行ったときに、韓流ドラマで使うような時代モノのオープンセットがたくさんあって、わりと安くで借りられるって話は聞いてたんで、それを使わない手はないなと。今回に関しては、ソウルから1時間ぐらいの龍仁大長今パーク(旧・龍仁MBCドラミア)っていう場所で撮ったんですけど、多少ムリしてでも海外まで行ったおかげで、本来はCGでやるようなカットも実景で撮れましたし、くだらない内容でありながら、画的にはそこそこのスケール感が出せたかなってのはありますよ。キャストも豪華だから、ガチガチの低予算作品なのに、まわりからも「ちょっとは予算あったんでしょ」みたいに言われますしね。

──ところで、脚本に人気お笑いトリオ・鬼ヶ島のおおかわらさんを起用したのも、監督のアイデアで?

山口 そうですね。最初は自分ひとりでプロットを揉んでたんですけど、僕自身が画太郎作品を好きすぎちゃって、なかなかファンの目線から離れられなかったんですね。で、もうちょっと別の目線からの意見が欲しいなって思っていたところに、今回脚本で入ってくれている構成作家の松原(秀)くんから、鬼ヶ島の単独ライブに誘われて。そこで紹介してもらったのが、おおかわらくんだったんです。まぁ、その日やってた、10本ぐらいのコントのうち、唯一、強烈にスベってたネタをたまたま僕が気に入って「あれは誰が書いたの?」って聞いたら、それが彼だったんですけどね(笑)

──ライブでスベったからこそ、逆に実現したコラボだったわけですね。

山口 そのときは特別、「画太郎っぽいな」とは思ってなかったんですけど、あとから聞いたら、今回出演もしてもらってる今野くんなんかは「鬼ヶ島のコントは画太郎っぽい」とずっと思ってたみたいですし、たぶんどこかで近いものを感じたんでしょうね。ことギャグに関しては、同じ感覚の人とディスカッションをしてナンボなんで、そういう意味でも、畑違いのおおかわらくんに今回入ってもらったのは方向性としては正しかったなと思ってます。実際、プロの映画脚本家にお願いをすると、「ギャグは監督がやってください」とかって丸投げされちゃうことも、ままありますしね。

──では最後に、「実現不可能」とまで言われた問題作を数々モノにしてきた監督ならではの、秘訣とはなんでしょう?

山口 ずいぶん難しいことを聞きますね(笑)。心がけみたいなことは特にないですけど、あえて言うなら「好きだ」ってことを外に向かって言い続けることじゃないですかね。今回の企画にしたって、山ほど映画監督がいるなかで最初に声がかかったのは「映画業界で画太郎がいちばん好きなのは山口だろう」と思ってもらえていたからこそ。「運命を引き寄せる」とか言っちゃうスピリチュアルっぽくなっちゃいますけど、結局はそういうことなんだと思います。

──つまりは「愛」であると。

山口 ちょっと強引な気もしますけど、そうなりますかね。そこに、松山くんをはじめとした演者のみなさんのスケジュールが奇跡的に空いていたり、おおかわらくんとの出会いがあったりっていう、偶然が重なったからこそ、いまこのタイミングで『珍遊記』は完成したんだと思います。おおかわらくんとの縁を取りもってくれた松原くんなんて、『おそ松さん』がバカ当たりしてるいまだったら、「ちょっと忙しいんで」とか言って断ってきたかもしれませんしね(笑)

【2/2】

「珍遊記」
出演:松山ケンイチ 倉科カナ 溝端淳平 田山涼成 笹野高史 温水洋一 ピエール瀧
監督:山口雄大
原作:漫☆画太郎「珍遊記~太郎とゆかいな仲間たち~」(集英社刊)
脚本:おおかわら/松原 秀 企画・総合プロデューサー:紙谷 零
制作プロダクション:DLE
配給:東映
ⓒ漫☆画太郎/集英社・「珍遊記」製作委員会 公式HP⇒http://chinyuuki.com

2月27日(土)より新宿バルト9他

全国ロードショー

 
 

山口 雄大/映画監督。1971年東京都生まれ。
2002年『地獄甲子園』で劇場映画デビュー。
以降、実現が難しいとされる漫画原作の実写化
映画など、話題作を撮り続けている。