イギリスの国旗を見ると必ず思い出すのが、子どもが生まれて3日目のこと。息を弾ませて病室に行くと、そこにはスヤスヤと眠る我が子と妻がいました。「ああ、おとうさんになったんだなあ」としみじみしていると、しばらくして看護婦さんが来て「おかあさん、そろそろお時間なので」と言います。はて?と思っていると、「ひろちゃんごめん、行ってくるね。あとはよろしく」と告げ、妻が部屋を出ていきました。

その病院では産後間もないお母さんを集めて豪華なディナーが出る事があり、この時は病室ではなく別室で一同で食事をします。ちょうどその日がディナーの日だったので、妻は会場に向かい、突然我が子と病室にふたりきりになってしまいました。

 

「今この瞬間、この世界でこの子を守るのは自分しかいない!やるぞオラーッ」と意気込みつつも、実はまだ一度もオムツ(布オムツでした)を替えたことが無いし、オムツを替える場面も一度しか見たことしかありません。妻が戻ってくるまで眠ったままでよろしく頼みます…と両手を合わせて深くお祈りしたものの、15分くらいした時に子どもが突然イギリスの国旗のような表情になりました。

「これは…見覚えがあるぞ…おきばり中のサインだ…どうしよう…」ナースコールのスイッチをしばらく眺めたものの、「いや、ここは自分でやるしかない」と奮起し、意を決してオムツを交換します。

頭の中で数十回シュミレーションした後、エイヤッ!と服をまくりあげオムツを取り出します。もう、頭の中は真っ白。正直、あまりにも必死過ぎて、この時の記憶がありません。気が付くとオムツの交換は終わり、子どもはまたスヤスヤと夢の世界へ。私は憔悴してベッドに倒れ込むことしかできませんでした。

 

妻が戻ってくるまであと30分…どうにかこのまま寝ていてください…そのかわいい寝顔をゆっくり拝ませて下さい…。と念じた瞬間またイギリス国旗顔!そして必死でオムツ交換してベッドに倒れた瞬間、またまたイギリス国旗顔!

結局妻が不在の1時間の間に3回オムツ交換をしました。部屋に戻ってきた妻に「どうしたんその顔!」と言われたほど私の顔はやつれてしまい、床にヘナヘナとしゃがみ込んでしまいます。その隣でまたもやイギリス国旗顔をする我が子。妻は涼しい顔でサラサラッとオムツ交換をしていて、すごい!と思ったものです。

その日の帰り道では、オムツを交換できたことでひとつ親としての階段を上ったような気がして嬉しくて、冬なのにコンビニでちょっと高いアイスクリームを買って帰りました。

 

この連載は隔週金曜日の更新です。第2話は、2週間後の3月18日(金)に更新予定です。次回もお楽しみに!