まず着手したのは、役員用個室の撤廃。役員を大部屋に集め、給湯器を設置して「お茶を飲みたければ自分で淹れなさい」という形にしてしまいます。さらに、バスルームや専属コック付き厨房などが併設されていた華美な社長室も取り壊して、土光氏自身は「馬小屋」とも評されたとても小さな社長室に収まり、常にドアを開け放った状態で、会議や来客などがなければ、いつでも社員からの相談を受け入れていたといいます(おかげでいろいろな社員が集まるようになり、結局、会うまでに数日かかった、という話も)。無駄を廃すことを旨としたので、社長でありながら社用車は使わず、通勤は電車を利用。出張でも付き人を付けないという徹底っぷり。
土光氏の著作のひとつ『経営の行動指針』には、その他にも檄文が次々と登場します。
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問題を見つけ、問題をつくりだせ。問題がなくなったとき組織は死滅する。

やるべきことが決まったら執念を持ってとことんまで押しつめよ。問題は能力の限界ではなく執念の欠如である。

人はいつも不足ぎみにしておけ。そうでなければ人は育たぬ。
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いやはや、濃いですね。いかにも戦後の経済成長を担った経営者らしい豪胆さを感じます。まあ、これだけ見ると、ブラックなにおいを感じないこともありません。ただ、土光氏の人となりを知るにつれて、そうした視点では計り知れない度量の大きさ、誠実さに打ちのめされてしまうのです。

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