時代劇や映画で見られる戦国合戦。何万もの軍勢が戦う場面は一番の見せどころであるからこそ、華やかで激しいもの。今回はそんな戦国合戦の裏側を『図解 戦国の城がいちばんよくわかる本』の著者であり、現在放送中の大河ドラマ『真田丸』の戦国軍事考証を担当する西股総生さんに、場内での戦いかたを中心に解 説していただきます。

戦国時代の城づくりで大変な伐採と抜根

 城を築く時には、まず任務や条件にかなった場所を見つける。こうして城の占地が決まったら、次は全体の大まかなプランを考える。つまり、縄張りだ。

 自分の領地のまん中に居城を築くのなら、時間をかけて縄張りを練ればよい。でも、今にも敵が来そうな場所に戦闘用の城を築く場合は、悠長なことはいっていられない。

 まず最初に、敵の襲撃に備えて、逆茂木などのバリケード類をつくっておく。
そうしておいて、主郭からつくりはじめる。城を築く自分=指揮官の安全を、まず確保しなくてはならないからだ。

 それに、大急ぎで築く城は、細かなところまで縄張りを練っている余裕がない。大まかなプランだけ決めて、現場合わせで帳尻を合わせてゆくことになるから、中心から外側に向かってつくっていかないと、縄張りのかみ合わない箇所が出てきてしまう。土砂や伐採した木を運び出すにしても、中心から外に向かって動かしてゆかないと、作業しにくい。

 堀や土塁をつくる場所では当然、木を伐採する。ここで、現代人が忘れがちなのが、木の根を引っこ抜く抜根作業だ。抜根をしないと地面を掘ったり削ったりできないが、機械のない時代には、抜根は重労働だった。だから、大急ぎでつくる城の場合は、伐採・抜根は最小限にとどめたい。

 戦闘用の城の中には、曲輪を平らにならしきっていないものも多いが、そうした曲輪は伐採や抜根を省略していたのだろう。むしろ、曲輪の中に適度に木を残しておいた方が、日陰や雨よけになって、城兵たちにも都合がよい。

 こうした土木作業は、ひたすら人力によってこなすことになるが、居城のように領内に築く城なら、領民を動員することができる。戦国時代の村人たちは、年間で決まった日数を築城などの作業に従事することになっていたからだ。

 しかし、大急ぎで前線に城を築く場合は、兵士たちだけで何とかしなくてはならないことも多い。当然、敵を防ぐために最低限必要なものから順番につくってゆくので、住み心地は二の次になる。

 ひと通りの堀や土塁ができたら、気になる箇所を強化すればよい。もしかしたら、敵が回りこんでくるかもしれない──そう感じた場所は、尾根に堀切を追加したり、斜面に竪堀を落としたり、虎口を工夫したりと強化する。

 戦国時代の人たちは、農民ではなくても農作業や山仕事の経験があるから、
兵舎となる掘立て小屋や、井楼櫓くらいなら、専門の職人を呼んでこなくても、どうにかなる。こうして、守備隊の人数や任務、条件に見あった城ができてゆく。