国際教育支援NPO「e-Education」創業者の税所篤快(さいしょ・あつよし)と申します。

平成元年生まれ、ただいま26歳。19歳のときに友人とバングラデシュに渡ってから、五大陸にDVDの映像授業を届けることで、世界中の教育格差の打開に取り組んできました。現在は、アフリカのソマリランドとバングラデシュのダッカを行き来していくつかのプロジェクトを進めています。

高校時代は偏差値28を叩きだした「落ちこぼれ」だった僕が、なぜこうしたプロジェクトを進められるに至ったのか。

そんな僕のスタートアップの物語を、僕をサポートしてくれた人々と言葉からお伝えしていこうと思います。

第五回は、バングラデシュの農村部に情報革命を起こしたアシル・アハメッド先生です。

 

「情報」には貧しい村を変える力がある

 

とにかくグラミン銀行に行ってみたい……そんな思いから、僕と三好大助、米瀬樹の3人はすぐにバングラデシュへ向かった。坪井先生のはからいもあり、グラミン銀行でガイドをつけてもらった僕たちは、バングラデシュの村の女性たちの話を聞くことができた。

 

驚くべきことに、村の普通の女性たちはグラミン銀行から借りたお金で、小さな売店や洋服作りなど、ビジネスをしっかりと軌道に乗せている。2週間の滞在期間を経て、僕たちはグラミン銀行と組んで何かをやりたい、という気持ちを新たにしていた。

帰国後、僕は重大な情報を見つけることになる。九州大学がグラミン銀行グループと共同研究を行っており、グラミン・コミュニケーションズ所長のアシル・アハメッド先生はICT(情報通信技術)でバングラデシュの農村部にイノベーションを起こそうとしているというのだ。

アシル先生はバングラデシュ出身で、文部省の奨学金で来日、東北大学の博士課程を修了し、情報技術と日本語に卓越した秀才だ。バングラデシュの村を情報化することで、村の暮らしを豊かにすることを目標としていた。

アシル先生には〝情報の価値〟を認識した原体験がある。情報が全くないバングラデシュの村では医者もおらず、悪徳な仲介業者に搾取されている現状があった。そこで大学生だったアシル青年は、自分の村に「ニュースペーパー・プロジェクト」を立ち上げた。

これは村人たちが自由に新聞を読める待合所を設けたもので、待合所は村のコミュニティセンターとして機能するようになった。情報が村に与えるインパクトを知ったアシル先生は、ICTによって村の暮らしを豊かにする研究にフォーカスするためGCC(グローバル・コミュニケーション・センター)を作ったのである。

GCCでは「ワン・ヴィレッジ・ワン・ポータル」というプロジェクトを推進していた。これは、一つの村に一つのポータルサイトを作り、これまで情報を搾取される側だった村人が情報を管理できるようにするものだった。「ICTこそが農村部を豊かにする」と信じるアシル先生ならではの大胆なプロジェクトだ。日本にやってきたアシル先生が、大分の地域振興運動「一村一品運動」に着想を得たものだという。これは簡単に言えば、それぞれの市町村が一つの特産品を作ることで地域振興を図った運動だ。

僕たちはアシル先生にコンタクトをとって、福岡まで会いに行った。これまでの秋田、バングラデシュ、九州までの経緯を聞いて、アシル先生は驚いた様子だった。きっと、僕たちの本気度が伝わったのだと思う。

「では、うちのラボと一緒に何かやりましょう」と言ってくれた。