いまやお花見は、外国人も観光に訪れるほどメジャーなイベントになっています。新入社員歓迎会を兼ねた毎年の恒例行事にしている企業も数多くありますね。
 ところで、そんな日本人にとって「当たり前」の祝祭であるお花見ですが、場所取りや、お酒が原因でトラブルが生じることもしばしば。
 そこで、ビジネスマンなら知っておきたい花見にまつわる法律的な問題について、アディーレ法律事務所(東京弁護士会所属)に聞いてみました。
現在、桜前線は東北地方を北上中

Q お花見の席取りは新入社員の役目だと言われ席を任された。
でも,お花見の席取りなんて業務は業務内容に無いから拒否できるの!?

 桜が咲いているとはいえまだ肌寒いこの時期、朝早くから席を確保するのは大変ですよね。ただ結論から言えばこれを拒否できるか、というのは結構微妙な問題です。

 まず、席取りが業務命令であれば従わなければなりません。業務命令とは、使用者が業務遂行のために労働者に対して行う指示又は命令です。業務命令で指示、命令することのできる事項であるかどうかは、労働者が労働契約によって許諾した範囲内の事項であるかどうかによって定まります。つまり,雇用契約のときに「従いますよ」とOKを出した内容については命令を出されたら従う義務があるんです。
 ただし,この「雇用契約」は,単に雇用契約書の業務内容に書かれた内容だけでなく、就業規則に書いてある内容にも、それが合理的である限り縛られます。たとえば、「職員は,他の職員,経営者との円滑な交流をなし,行動に品位を保つなどして、職場環境の向上に努めなければならない。」と就業規則が定められていたとします。このような就業規則があれば、「円滑な交流をなし…職場環境の向上に努める」ことは業務の内容であり、そのための方法として「花見の場所取り」の業務命令は正当化される余地があるかもしれません。(アディーレ法律事務所・岩沙好幸弁護士)

 結局、拒否できるかどうか、業務命令といえるかどうかは、雇用契約や就業規則の合理的な解釈によりますので、はっきりした結論は個別の契約内容等をみないと判断できませんね。

Q 良く花が見える人気の場所は、前の日の夜から席を取っておかないと取れない。会社の就業時間以外の時間も使ったけれど残業代が出ないのは違法!?

 有名なお花見スポットで、しかも大人数分の場所を確保するとなると、かなり「長時間の労働」が必要ですね。果たして、残業代は出るのでしょうか。

 会社が残業代を支払う義務があるのは、花見の場所取りの時間が「労働時間(労働基準法32条)」にあたるときです。この「労働時間」は,労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれていたか否かによって判断されます。
 たとえば,「これは業務命令だ!」と上司に言われてやむなく行った場合は労働時間にあたるので、残業代が出るという結論になります。
 これに対して、せっかくだからいいところで花見をしたい、という有志が集まって場所取りをしました、という場合だと労働時間にはあたらないでしょう。
 結局、残業代が出るかどうかは使用者の指揮命令で行ったかどうかで結論が変わってきますね。(アディーレ法律事務所・岩沙好幸弁護士)
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