HK連続テレビ小説「あさが来た」の田村宜役で一躍脚光を浴びることとなった吉岡里帆。フレッシュな新人女優というイメージがあるが、実は18歳の頃から、小劇団や自主制作映画などで女優としてのキャリアをコツコツと築いていたという。そんな彼女が女優を目指すようになったきっかけとは?

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「根がアングラなんです(笑)。丸尾末広さんみたいな、
ああいうグロテスクな世界、暗い世界が好きなんです」

----そもそも女優になろうと思ったのは、どうしてでしょうか?

吉岡 もともと両親や祖母が舞台や映画が好きだったんです。歌舞伎や能などの日本芸能に触れることも多かったですし。それで戯曲を読んだりしてたんです。でも、自分でもやりたいと思ったのは18歳の時に見た小劇場での「銀ちゃんが行く」(作・つかこうへい)だったんです。同志社大学の中にある小劇場で、本当に小規模な舞台だったんですけど、自分と同じくらいの年の人たちが必死で汗だくで演じていて、衝撃を受けました。舞台を見て、あんなに泣いた
ことも無かったし、どうしてもこの世界に入りたいと思ったんです。

----無名の学生の劇団なんですよね。それにそんなに衝撃を受けたというのは面白いですね。

吉岡 その人たちは、もう卒業で演劇を離れなくちゃいけないという状況だったんです。その切なさにも感動したのかもしれないですね。それで私も劇団に入りたいと思ったんですけど、募集していないと断られたりして。とりあえず東京の養成所に通いながら、京都の小劇場を回ってました。出たいオーラを出しまくりながら(笑)。一年くらいして、唐十郎さんの戯曲で主人公を探しているというお話をいただきました。幼い少女の役だったんですが。それが私の小劇場デビューです。心がぶわーっと開いて、もう一生これをやっていこうと思いました。

----意外にアンダーグラウンド志向なんですね。

吉岡 そうです、根がアングラなんです(笑)。丸尾末広さんみたいな、ああいうグロテスクな世界、暗い世界が好きなんです。私は運がよくて、いろんな人との出会いがあって、今ここにいるんですけど、ずっと京都の小劇場で舞台に立っていたという可能性の方が高かったと思いますね。

----自主制作映画にも出てますよね。

吉岡 その頃、「天地明察」という映画のエキストラに出たんです。みんなで着物着せられて突っ立てるだけなんですが。宮崎あおいさんも出ていて、「わー、女優さんってやっぱりすごい」って思ったり。

----「あさが来た」の前にも、宮崎あおいさんと共演してたんですね。

吉岡 そういえばそうですね(笑)。その時に隣にいた男の子が、ものすごく熱心に立ってるんです。立ってるだけなのに、一生懸命だというのが伝わってくる。思わず「疲れませんか?」って聞いたら、「いや、僕は本当にこの世界が好きなんで」って答えて。その子は映画監督を目指していて、「僕の映画に出てくれないですか」って言われたんです。それからは、毎日撮影でした。どんどん輪が広がって、誰にも知られないような自主制作の映画にたくさん出るようになりました。だから、フレッシュな新人みたいに書いていただくと、なんかすごく心苦しくって(笑)。

----その頃の自主制作映画「星を継ぐ者 /inherit the stars」も今度、東京と大阪で公開されるみたいですね。

吉岡 これも2年とか3年とかかかって撮ったのに、ちゃんと公開されなくって誰にも見てもらえないのかなって思ってたんです。自主制作映画って、そういうことが多いから。これを撮ってから、私は東京で頑張ることになったんですけど、みんなは「しょせん商業に行きやがって」って感じだったと思うんです。でも、私が知名度上がれば、この映画も見てもらえるから頑張ろうって気持ちでした。それでこの間、宣伝ありがとうって、電話が来て。嬉しかったですね。

----そして吉岡さんは東京で多くの映画に出演しているわけですが、その一つ「つむぐもの」が公開されましたね。

吉岡 かなり思い入れのある映画です。日韓国交正常化50周年の記念作品で、社会的価値のすごく高い映画だと思います。とにかく人と人はいがみあうべきじゃないよねという平和のメッセージが込められています。私の役柄は介護福祉士なんですが、介護の世界は過酷で人手が足りなくて、それでいてお給金はよくない。必要不可欠なのに、負荷がかかりすぎてるという現実も知ってもらいたいですね。

----「あさが来た」とはずいぶん違う世界ですね。

吉岡 宜ちゃんは、みんなでコテコテとキャラを作り上げたんですけど、今回私がやった役は、みんなそぎ落として、言葉だけが伝わるように、ということを心がけました。

取材・文/安田理央 撮影/井上太郎

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吉岡里帆出演映画
犬童一利監督作品『つむぐもの』


紙漉き一筋で生きてきた不遜で偏屈な性格の伝統工芸士の剛生(石倉三郎)。目標を見いだせず韓国
で怠惰な生活を送ってきたヨナ(キム・コッピ)はワーキングホリデーで日本にやってくる。交わるのはずのない2人は、剛生が脳腫瘍を患い半身麻痺になったことをきっかけに出会い、いつしか深い絆を育み、互いにかけがえのない存在になっていく……。剛生の介護を務める介護士でヨナの同僚である涼香役を吉岡里帆が演じる。 3月19日(土)より、有楽町スバル座ほか全国順次ロードショー
出演:石倉三郎、キム・コッピ、吉岡里帆、森永悠希、宇野祥平、内田慈、日野陽仁

(C)2016 「つむぐもの」製作委員会
【公式サイト】www.tsumugumono.com 【Facebook】www.facebook.com/tsumugumono

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吉岡里帆(よしおかりほ) 1993年1月15日生まれ。京都府出身。NHK連続テレビ小説『あさが来た』で田村宜役を好演しいちやく注目を集める。有楽町スバル座にて公開中の映画『つむぐもの』出演。4月3日より毎週日曜夜6:00~スタートのJ-WAVE「UR LIFESTYLE COLLEGE」では初ナビゲーターに挑戦。4月17日より毎週日曜夜10:30~スタートのドラマ『ゆとりですがなにか』にも出演する。