上司が部下に指示をするときに、「意図」が伝わらないと混乱を招くことがある。
ビジネス心理学の第一人者、内藤誼人が伝えるコツを伝授する。

指示だけでなく「意図」を伝えよ

 部下に指示を出すときには、「意図」まで伝えるのがポイントである。

 自分が何をしたいのかまで教えておけば、かりに指示に足りないところがあっても、部下は部下なりに気を利かせて行動してくれることがあるからだ。

 米国ラトガース大学のジェニファー・タイスによると、「○○したい」と、自分の意図や要望を出したほうが相手もそれに沿って行動してくれると述べている。

 たとえば、店長が店員に「モップを持ってきてくれないか」と頼んだとしよう。

 店員は、倉庫に行ってみたがモップが見当たらない。そこで戻ってきて、「モップはありませんでした」と報告する。店長は、「それなら雑巾を持ってきてくれ」と改めて指示を出しなおすことになる。

 けれども最初から、「床にこぼれた水を拭きたいんだけど」という意図を伝えておけば、店員は、倉庫にモップがなくとも、雑巾を持ってきたかもしれない。単なる指示だけでは人は気を利かせてくれないが、意図を伝えておけば、その意図に沿った行動をとってくれるものなのだ。

 部下に書類の作成をお願いするときにも、「重役の会議用資料として使うつもりなんだ」とあらかじめ意図を説明しておけば、部下のほうでいろいろと気を遣ってくれる。

 たとえば、「重役には年配の人が多いから、ちょっと文字を大きくしておこう」といった気配りをしてくれるかもしれない。そうすれば、わざわざ部下に書類を作ってもらった後で、「もっと文字を大きくしてよ」などと、指示を出しなおす必要もなくなる。

 

 「明日、お客さんのところに持っていく資料なんだ」と意図を伝えておけば、それなりに見栄えがよくなるように書類を作ってくれるかもしれない。単に「書類を作っておいて」では、部下も気の利かせようがない。

 意図を伝えておくと、相手はみなさんの意図に沿った行動をとってくれる。

 そんなに細かく指示を出さなくとも、意図さえ説明しておけば、そんなに大きな間違いはしなくなる。

 「応接室の掃除をしておいて」という指示では、「どうせ応接室なんて、ほとんど使わないんだから」と手抜きをするかもしれない。

ところが、「大事なお得意様がいらっしゃるから、午後から応接室を使いたいんだよ」と意図を伝えておけば、窓を開けて空気を入れ替えておいてくれたり、ゴミ箱を空にしておいてくれたりと、部下なりに気を遣って掃除をしてくれるであろう。

 指示を出すのがヘタな人は、自分が何を望んでいるのかの「意図」を伝えていないことが多いので、相手を混乱させてしまうのである。指示を出すときには、意図を含めるのだというルールは非常に重要なので、ぜひ覚えておいてもらいたい。