第一回の質問でも答えていただいたように、大学入学当初はコンピューターグラフィックなどに関心があったそうですが、慶應SFCのどんなところに魅力を感じたのでしょうか?

AO入試もコスト・パフォーマンスで決めた

 僕は慶應義塾大学の環境情報学部に入学しました。「受験時や入学後すぐに、専門を選ばなくていい」というのが、ここを選んだ最も大きい理由です。
 この学部には事実上「学科」という概念が存在せず、幅広いジャンルが網羅されている講義を、好きなように履修できるんです。経済学部や法学部のような他の学部では、入学の段階で専攻を決めなければいけませんよね。でも、どうせ学部を出たくらいでは深い専門性が身に付かないし、どこの学部に行ったところで就職活動の時は同じようなスタートラインに立たされますよね。だったら、「何でもできそうな学部、いろんなジャンルで面白そうな人がいそうな場所がいい」と思ったんですよ。

慶應SFC(湘南藤沢キャンパス)は1990年の開校と同時に、日本初のAO入試を導入。2015年度には総合政策学部と環境情報学部でそれぞれ168名、142名のAO入試合格者を出している。

 ただ、大学もAO入試(アドミッション・オフィス入試)という、推薦入試みたいな制度を利用して受験したので、結局受験勉強はしませんでした。ここでもコスト・パフォーマンスで考えていましたね(笑)。AO入試は「高校までの学業や課外活動などの総合評価」「当日の小論文・面接」などの要素で合否を決める入試方法です。だから、何かしらの受賞歴があった方が有利なんですよ。

 だから高校生の時の僕は、AO入試を狙うために「何か受賞歴を作ろう」と考えました。文章を書くのは嫌いじゃなかったので、最初は作文や論文コンテストが思い当たったんですけど、あれってかなりの分量を書かないといけないじゃないですか。
 そこで、ひらめいたんです。「詩を書けばいいんだ」って。
 詩なら数十行程度の分量だからすぐに書けるので。それで運良く賞をもらえたので、それをアピール材料にしてAO入試に応募しました。おかげで大学に入ってからは「ポエ(ポエムの略)」ってあだ名が付いたんです(笑)

 僕はたまにネット上で「受験もせずに詩をアピールして入学した」と揶揄されるのですが、その時に「AO入試は“アホでもOK入試”の略称じゃないの?」なんて言われることもあって。
 確かに、AO入試って選択式の筆記テストに比べると、不公平な試験制度にも思えなくないんですよね。課外活動重視というのは、つまり「子どもの頃から多様な経験を積むことのできる富裕層」が有利になりますし、面接重視ってことは「口のうまい人」が合格しやすい……という事実も否定できません。

 それでも、昨今では「暗記した知識以外の、点数では測れない力」が社会で重視され始めていますし、ペーパーテストの成績がいい人が大学入学後に必ずしも活躍できるわけではない。
 ちなみに、AO入試で入学した学生と、そうではない学生のどちらが大学入学後、そして大人になって優れているかは、まだ結論が出ているわけではありません。ただ、慶應SFCに関していえば、問題意識が明確なのはAO入試で入学した学生のようですね。

 

明日の第二十回の質問は「Q20.大学に入って世界は開けましたか?」です!