常にフラットな視線を持っているイメージから、「アニメや小説も分析しながら見ているんだろうな」と思われがちな古市さんですが……意外なほどに大衆的な感覚から導き出された「サブカルの未来」は?

みんなが好きになる、わかりやすいものが大好き

写真/花井智子
住野よる・著『君の膵臓をたべたい』は2016年本屋大賞の2位を獲得、50万部を突破するベストセラーとなった。

 うーん、僕って感覚は本当に偏差値50なんですよね。いわゆるサブカルに分類されるようなものより、世間で流行っているようなわかりやすいものが大好きです。小説でも、多くの編集者の方が小馬鹿にするようなものが好きだったりします。
 最近読んだ『君の膵臓をたべたい』は、インテリ編集者たちが「構成がチープだ」とか「文章が稚拙だ」って言いますけど、本当によくできた小説だと思います。この作品は、2000年頃に流行った『Deep Love』などの携帯小説とも似ていると思います。

 まず僕が面白いと思ったのは、主人公がちょっとしたことでヒロインに褒められる点です。
 たとえば、主人公が『星の王子さま』を知っていただけで、女の子から「すごい、こんなマニアックなもの知ってると思わなかった」って言われるシーンがあるんです。本当に驚愕したんですけど(笑)、さして主体性のない主人公は些細なことでヒロインから繰り返し褒められている。ヒロインもぐいぐい主人公をリードしてくれるのに、作中にある仕掛けのおかげで「悪い女」には少しも見えないんです。

 携帯電話に関する描写がやたら多いのも興味深かったです。これ、実はすごく大事なポイントだと思うんです。きっと地方でこの小説を読んでいる人にとって、携帯電話は、身体的かつ精神的に社会とつながるための命綱みたいなものです。それはおそらく、東京で暮らしている人やメディア関係者には、もう想像できないくらいに重い存在なんですよ。
 だからこそ、携帯電話のことを細かく丁寧に書くことで、都市圏ではない場所に暮らす多くの読者の共感を得られたんだろうなと考えています。

 少し分析的な視点で話しましたが、僕は「構造が~社会的に~」みたいな話を抜きにして、単純にこの作品は好きです。みんなが好きになるようなもの、万人の願望を満たしてくれるものって、安心感があるんですよね。

 ただ、アニメはほとんど観ないですね。最近だと友達から勧められてHuluで観た「おそ松さん」と「ドラえもん」の映画くらい。
 学者や評論家がよく「アニメで時代を読む」みたいな評論や本を出していますが、ああいう人たちも単純にアニメ好きなんだと思いますよ(笑)。本当に「アニメ」で時代が読めるのかは僕にはよくわかりません。ただ、「キングオブプリズム」というアニメ映画の「応援上演」は面白かったです。映画館なのに、みんなサイリウムを持ったり、歓声を上げたり、キャラクターを応援しながら映画を観るんです。そのような体感型のエンターテインメントはこれからも増えていくでしょうね。

 

明日の第二十三回の質問は「Q23.どんな音楽を聴くんですか?」です!