学生の就職活動がピークとなる春。バブル崩壊後の就職氷河期、リーマンショックなどを経て、「就活」は今どのような変化を遂げているのか? 法政大学の「キャリアデザイン学部」という個性的な学部で教鞭を執る児美川孝一郎氏に、現在進行形の就活の姿について聞いた。

――季節がら、学生の方の中には就職活動まっただ中の人も多いと思います。景気が回復傾向となり、求人数も増えてきている今日の「就活」ですが、以前より就活生は楽になったということでしょうか?

 

 「楽になった」というときには、いつと比べるかが重要だと思うのですが、比較対象となる時代は二つあると思っています。一つは、バブル崩壊前までの日本。その頃の就活生と比べれば、今の就活性は全然楽になっていません。むしろ難しくなっているんじゃないでしょうか。昔の大学生は、希望すればほとんどの人が就職できましたが、バブル崩壊後の失われた20年、30年の中で、学生の就職難が生まれた。それはある程度現在の就職活動にも影を落としていて、たとえアベノミクスが効果をあげたとしても変わらないと思います。
 ただし、バブル崩壊後の20年、30年の中には、より厳しい就活を強いられた「氷河期」と呼ばれる時代、そしてリーマンショックなどもありました。そういった特定の一時期と比べるならば、ここ数年は多少就活がしやすくなっているとは言えるでしょう。実際に、就職内定率も上がっていますし、正規就労率も上がっているのですから。
 ただ、それを「楽」というかどうかは別問題ですよね。就職に対するプレッシャーの大きさは変わらないと思いますし、最近は就職活動の日程がコロコロ変わっていて、それに翻弄されている学生もよく見かけます。だから、客観的な数字だけ見ると、就活は楽になったように見えなくもないですけど、実際は決してそうとは言いきれないということです。


――就活中に苦労する点も、昔と今とでは違うのでしょうか?

 昔は護送船団方式みたいなところがあって、大多数が行くであろう合同説明会などの就活イベントが決まってありました。それが今は、採用方法が多様化してきていますよね。かつてのようなイベントが消えてしまったわけではありませんが。今現在、会社説明会などの解禁は3月になっていますが、人によっては大学3年生の夏のインターンシップが、第0次採用試験になっていたりもします。狙っている企業や業界が明確にある学生はいいかもしれませんが、就活についてなんとなくしか考えていない学生は、「勝負どころが分からない」という難しさが、今はあると思います。
 現在はかつてと比べれば新卒一括採用しかないという風潮はだんだん弱くなり、企業が採用の機会を複数回設け始めているので、「この時期を逃したらもう就職先がない」という切迫感は少しだけ和らいできたのかもしれません。可能性や選択肢が増えているということでもあると思います。そういう意味では、今の就活は従来に比べるとかなり「多チャンネル化」しているわけです。ただ就活の多チャンネル化は一方で、企業側の出方によって日程や採用方法がコロコロ変わることを許容してしまってもいて、学生側が踊らされてしまっている一面もあるかもしれませんね。


――ここ数年取り沙汰されている「3年以内の離職率の上昇」は、この就活の多チャンネル化の弊害ではないのですか?

 ある種の弊害かもしれませんが、それ以前に昔から、景気が良くなってくると就職がしやすいので離職率が上がるという傾向はあります。新卒採用のときに最大限の苦労をしていないから、会社を辞めてもどうにかなると思っている人も多いかもしれないですし、今は第二新卒での応募機会もあります。会社を辞める理由は人それぞれあるとは思いますが、総じて、就職しやすかった世代は辞めやすい世代なんだと思います。

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