グラウンド以外での戦い

 

 お笑い芸人・360°モンキーズの杉浦双亮が「プロ野球選手」となって3カ月近くが経った。
 芸人と野球選手の二足の草鞋。40歳での挑戦。
 たくさんの声援があった。
 一方で……心無い声や、付きまとう不安もあった。そうした「グラウンド以外での戦い」とはどんなものであったのかーー。

 ホーム開幕第二戦。杉浦はついに「プロ野球選手」デビューを果たした。
 対読売ジャイアンツ三軍との一戦の9回、3対4と僅差の試合でマウンドに上がる。相手チームには、かつてのセーブ王・西村健太朗や盗塁王・藤村大介らがいた。緊張しないはずがない。不安がないはずがない。

 そんな時、杉浦は野球のそれとはまったく異なる不安を覚えていた。
「愛媛マンダリンパイレーツをずっと応援し続けていたファンの人たちは僕を受け入れてくれているのだろうか……」
 ブルペンからグラウンドに一歩足を踏み出すまで、その不安は消えなかった。初登板だから当然なのだが、ファンの前で投げるのはオープン戦以外で初めてだった。マウンドというグラウンドで戦う前に、杉浦はそうした不安と戦わなければならなかった。
 杉浦はこう振り返る。

「話題づくりのために四国アイランドリーグにやってきた。そういう目で見られているのではないか、歓迎されていないのではないか。その不安はずっとありました。僕が入団する以前からマンダリンパイレーツを応援し続けたファンの方に対しては特にそうでしたね」

 結果は大歓声だった。

「本当に嬉しかった」

 杉浦はそう言う。

 杉浦が、こうした「グラウンド以外での戦い」を、最初から想定していたか、と言われれば答えはノーだ。
 四国アイランドリーグのトライアウトを受験することを表明したのは2015年10月末のこと。多くのメディアでも報道されたことで、それは当然、同じくトライアウトを受ける選手や、四国アイランドリーグに所属する選手たちにも知れた。

「トライアウトの3日目ですかね、トライアウトを手伝ってくれている現役の選手たちに言われたんですよ。『杉浦さんがトライアウトを受ける、って聞いてすごく嫌だった』って」

 杉浦はそう振り返る。その時、杉浦は言葉の真意をはかりかねていた。「え? なんで?」と。

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