「読書で知的武装」するなんて実にくだらない!

「情報を仕入れるための読書」から、いい加減、卒業しよう!

ゲーテ、ニーチェ、アレント、小林秀雄、三島由紀夫……

偉人たちはどんな「本の読み方」をしていたのだろうか?

正しい「思考法」「価値判断」を身に付ける読書術とは?

哲学者・適菜収が初めて語る「大人の読書」のススメ。

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第14回

人間はいつからとりかえしがつかなくなるのか?

 

 いったい、人間はどの段階でとりかえしがつかなくなるのか?

 いつまでなら、とりかえしがつくのか?

 二〇代だったら十分間に合うと思います。「子供の読書」、つまり濫読をしていてもかまわない。もっとも濫読さえしていないのは論外ですが。

 三〇代だったら、かなりきついでしょう。政治家や大学教授といった職業の人にも、「子供の読書」のまま突っ走ってしまった人は多い。

 いわゆる頭のいい人はバカが多い。

 情報により完全武装してしまった人間。

 彼らは論文を書き、権力とカネを手に入れ、教義を布教する。それをこじらせると竹中平蔵みたいになってしまう。

 自分の立場を疑う、自分の足元を破壊する、危険なものに接近する、人間の業(ごう)を理解する……こうした経験がない人ですね。

 三〇代前半がギリギリでしょうか。その場合は、一〇代のように濫読しながら、同時に「大人の読書」に切り替えていく必要があります。濫読しながら、それとは別に古典を月に二冊くらいのペースでゆっくり読んでいくような感じですね。

 月に二冊なら、年間二四冊です。

 読むべき本を、そのくらいのペースで読めば、なんとかなると思います。

 仕事に忙しいサラリーマンでも、年間二四冊ならいけるのではないでしょうか。

 私の読書量も年間二四冊くらいです。もちろん「情報」を得るための本は別ですが。

 四〇歳になったら諦(あきら)めるしかない。

 四〇歳でとりかえしがつかないと、そのまま墓場まで行く可能性が高い。

 その場合は、来世で頑張るしかありません。

 某所でそう言うと、反論されました。

 たしかに本の読み方に早く気づけばいいが、四〇代、五〇代でも、なんとかしたいという人もいる。今は人生八〇年、九〇年の時代であり、頭がしっかりしている老人も多い。だからそんなことを言うなと。

 だとしたらまず「言い訳」をやめるべきです。

「とりかえしのつかなくなった人」は言い訳を続けてきた人です。

「忙しくて本なんて読む時間がない」「子育てに精いっぱいだった」と。

 しかし、よく言われるように、忙しい人ほど本を読んでいるものです。

 本当に時間がないなら、ムダな時間を減らせばいいだけです。

 一番ムダなのはテレビと新聞です。

 テレビと新聞を全否定するつもりはありませんが、確実にそれは時間をつぶします。

 私はものまね番組を除いて一切テレビは見ません。

 ものまね番組は知人に頼んで、HDに入れてもらったものを見ます。三時間のものまね特番を、つまらないものとCMを飛ばして三〇分くらいで見る。

 余談ですが、ものまね番組はお笑い芸人の仮装コントみたいなのをやめるべきです。つまらないし、本職のものまね芸人に対して失礼です。フジテレビと日本テレビがものまね特番を作っていますが、一流のものまね芸人の才能を活かしきれていない。

 コージー冨田、君島遼、青木隆治、神奈月、コロッケ、荒牧陽子、ほいけんた、松村邦洋、ノブ&フッキー、清水ミチコ、ダチョウ倶楽部あたりしか出てこない番組を作ってほしい。

 それと、友近は出さないでほしい。

 先日、某所でニュース番組を見たのですが、「老人より若者のほうがネットに悪口を書き込む傾向がある」という話を、路上の若者のインタビューなどをはさみながら、延々一五分くらいやっていた。文章なら二行くらいで説明できる内容ですし、それを知ったところで、だからどうしたという話。

 一時間番組のうち大体四分の一はCMでしょうか。テレビ局が番組を作る目的はCMを視聴者に見せることです。

 だから世の中の最底辺の人間に向け、くだらない番組を作る。

 要するに、テレビ番組がくだらないと嘆くことがくだらないのですね。

 一番いいのは、テレビを捨てることです。

 物理的になくなれば、見ることもなくなりますから。

 もったいないというなら、時間のほうがよっぽどもったいない。

 今すぐ、家電取扱店か家電リサイクル受付センターに電話して、回収してもらいましょう。

 

 〈第16回「社説を読めばバカになる」につづく〉

 

著者略歴

適菜 収(てきな・おさむ)

1975年山梨県生まれ。作家。哲学者。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、『日本を救うC層の研究』(講談社)、『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志・中野信子との共著『脳・戦争・ナショナリズム 近代的人間観の超克』(文春新書)など著書多数。