「読書で知的武装」するなんて実にくだらない!

「情報を仕入れるための読書」から、いい加減、卒業しよう!

ゲーテ、ニーチェ、アレント、小林秀雄、三島由紀夫……

偉人たちはどんな「本の読み方」をしていたのだろうか?

正しい「思考法」「価値判断」を身に付ける読書術とは?

哲学者・適菜収が初めて語る「大人の読書」のススメ。

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第16回

社説を読めばバカになる

 

 新聞もやめたほうがいい。朝刊と夕刊に一五分をあてたら、一日三〇分がムダになります。月にしたら一五時間です。

 一五時間あれば、古典の大著を二冊は読める。年間なら二四冊です。

 新聞なんて読まなくても、誰でも知っているような情報は自然に耳に入ります。たとえば総理が代わったとか、どこかで大きな地震があったとか。

 あらゆる賢者が語っているのは「新聞は読むな」ということです。

 ショウペンハウエルもキルケゴールもニーチェもゲーテも「新聞は読むな」と言いました。

セーレン・キルケゴール (一八一三〜五五年) デンマークの哲学者、思想家。実存 主義の先駆けとして評価される。著 書に『不安の概念』『死に至る病』など。

 ニーチェは言います。

 ヨーロッパ精神の一般的な粗雑化、率直だとか正直だとか科学的だとかと自画自賛するのが好きな或る種の無骨なざっくばらんさ、これは、民主主義的時代精神とその湿った空気との結果である。もっときっぱり言えば――それは新聞を読むことの結果なのだ。
(『生成の無垢』)

 ヘッセはなぜ人は新聞を読むのかと問います。

 そして彼らはこれらの新聞記事の九十パーセントを、好みからでも必要からでも、楽しみからでもなく、「私たちはやはり新聞を読まなくてはならない!」という昔からのくだらない習慣から読んでいるにすぎないのである。
(「書物とのつきあい」)
ヘルマン・ヘッセ (一八七七〜一九六二年) ドイツの作家。一九四六年にノーベ ル文学賞受賞。著書に『郷愁』『車輪 の下』『春の嵐』など。

 テレビを捨てればテレビ欄は必要なくなります。今の時代、株価欄はいらない。新聞の社会面には、どこで交通事故が起きたとか、どこで殺人事件が起きたとか、どうでもいいことしか書いていない。誰かが言ってましたが、社会面は他人の不幸を楽しむだけのもの。人間が下種になる。

 社説を読めば、確実にバカになります。

 社説がくだらないのは、書いている人間の能力が低いからではありません。

 逆です。

 きわめて能力の高い職人のようなライターだから、ああいう反吐が出るような文章を毎日量産できるのです。

 特に大手新聞の読者は、数百万人単位です。子供から老人までいる。その大多数から苦情も反論も来ないような、毒にも薬にもならないような文章を書く必要がある。

 そんなものを読む暇があるなら、寝ていたほうがましです。

 ヘッセも端的に言っています。

 もちろん一般的に、新聞は書物の最も危険な敵の一つである。それが少額の料金で一見したところ多量の記事を提供して、読む者に過大な時間とエネルギーを要求するからだけでなく、むしろ新聞は個性のない多種多様な内容で何千人もの読者の趣味と、新聞を読むだけにはもったいないほどすぐれた読書能力をスポイルするからである。(同前)

 

〈第17回「新聞をやめよう」につづく〉

 

著者略歴

適菜 収(てきな・おさむ)

1975年山梨県生まれ。作家。哲学者。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、『日本を救うC層の研究』(講談社)、『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志・中野信子との共著『脳・戦争・ナショナリズム 近代的人間観の超克』(文春新書)など著書多数。