2010年に25歳で単著『希望難民ご一行様』を出版以来、「若手社会学者」と呼ばれてきた古市さんも去年、30歳に。20代と30代で「できること」は大きく変わる?

完璧な人間を目指す必要はない

写真/花井智子
29歳を過ぎたあたりから、周りの人たちに「結婚は?」と聞かれる回数が増えてきたという。

 昨年、僕も30歳になりました。もちろん30代からも新しいことは始められますが、その「始め方」が変わってきますよね。だって、経験も知識も20代よりは豊富なわけですから、それを活かさないと勿体ないですから。
「自分を変える」って、基本的に無理だと思っていいと思います。生まれ持った性格、育ってきた環境、身に付けてきたスキルや専門性……それらが全部合わさって、今の自分がいるわけですから。
 だから、新しく何かを始めようという時は「これまで自分が何を蓄積してきたのか」を見直してみるといいんじゃないでしょうか。これまでの経験上「自分ができること、得意なこと」だったり、「直感的な好き嫌い」もわかってきているはず。だったら、自分を無理やり変えようとは考えないで、今の自分の持っているスキルや個性を、どうしたらもっと生かせるか、と考える方が合理的だと思います。
 自分が得意なことを生かせなかったり、自分が好きなことを実現できなかったりするような会社にいるなら、転職するのも一つの手です。自分のパフォーマンスを最大限に発揮させるためには、ストレスなく居心地よく過ごせる場所が必要ですから。ただ、転職しても自分の居場所を一から作らないといけないし、自分自身までが生まれ変わるわけじゃないですけど。
 やっぱり完璧な人間を目指す必要はないと思います。むしろ得意なことは一つでもいい。たとえば、実務能力は乏しいのに対人関係の「マメさ」だけで、会社でうまくやっていける人もいますよね。すべてを完璧にこなすことは不可能ですから、何か一つでも自負できる能力があると、精神的にも楽に仕事ができるはずです。
 ただ、得意、不得意にかかわらず「挨拶」や「礼儀」みたいなベーシックなことが大事な機会って多いですよね。実は、そういう当たり前のことを当たり前にやるって、難しいことでもあります。
 日本最大の結婚相談所「IBJ」とのシンポジウムに参加した時に聞いたのですが、「結婚できない人、恋人がいない人」は、特に男性には会社で挨拶ができない人が多いという傾向があるようです。だから同僚ともうまくいってないことも多い。実際、恋人がいない人は友人が少ないというデータもあります。
 僕も「礼儀正しく挨拶をしろ」なんて押し付けられるのはイヤですけど、毎日会社で顔を合わせる相手なら、仲良くしておいた方が合理的ですよね。それでも「自分から挨拶はしたくない、できない」と言うのであれば、多少ぶっきらぼうでも周りから文句を言われないくらいの「専門性」を持っていればいいんです。
「挨拶」でも「専門性」でもいいから、まずは自分の得意なことを認識する。結局、何をするにしても、人間相手の社会で生きていく以上、基本的なことは総じて大事だと思います。

 

明日の第二十九回の質問は「Q29.新しいことに挑戦するために必要なことは?」です!