恋愛離れが止まらない時代……「交際相手が欲しい」男女の割合は大きく減少し、その理由は「恋愛が面倒くさい」が大多数を占めるという。漫画家・山田玲司がそんな「恋愛の壁」が生まれた原因を2007年に見出す!?

女たちの「天使としての価値」が地に堕ちた年

イラスト/山田玲司

 2000年代にできた強烈な壁の一つが、「現実の恋愛に対する壁」だろう。
 1990年代に自分の性を叩き売りした「援助交際の時代」があったわけだけど、そこには自分の同級生の女子が「ギャル」になり、金で身体や下着を売っていたのを見ていた「男子たち」がいたわけだ。
 1990年代初期はバブル時代のなごりで、金持ちの男に自分を高く売ろうとした前期(神田うのなどのイメージ)から、ルーズソックスを履いておっさんに下着を売る、価格崩壊の後期まで、女たちの文化に「女(性)を売る」という空気が蔓延していた。
 1980年代のアイドルが松田聖子や菊池桃子のような、簡単には自分(性)を売らないイメージだったのとは対照的に、1990年代のアイドルのイメージは、森高千里、安室奈美恵、宮沢りえ、あたりを境に清純イメージを消し、ショーパブの女たちの形式を採用した「モーニング娘。」に至る。

 その後は自分で買える感覚を持てる、会えるアイドルAKB48が「彼女のカタログ」を提供するかのように現れるのだ。
 これは、金で自分を売る女たちを見てきた男たちがたどり着くべくしてたどり着いた、自分に見合う額で彼女を買う、というゴールだった。
 若い男は、女に対して「女は天使のように清純で綺麗なもの」という幻想を持たせてもらえなければ、心から女を愛することができないようにできている(例外はあれど)。
 なので、援助交際をする女(ギャル)たちはその若い男の幻想を裏切り続けてきたわけなのだ。そして、ギャルの方はと言えば、自分を「性の商品」として売りながら、そんな彼女たちを平気で買う嫌な大人たちに復讐するかのように肌を過剰に焼き、髪をぞんざいに染め、マジックインキでメイクを始める。
 これはある意味「仮面」であり、自分のアバターを抱かせることで、自分自身を守ろうとしていたのかもしれない。
 そんな「ヤマンバギャル」と呼ばれる彼女たちと、その仲間たちは、誰とでも寝る上に、風呂にも入らない、と言い出した。通称「汚ギャル」の登場だ。これは主にメディア上の話なのだけど、男たちは感覚的に天使の絶滅を感じてしまうのだ。
 この段階で多くの若い男は潜在的に現実の恋愛から撤退したのではないかと思う。そして、2007年にホームレスギャル「浜田ブリトニー」が現れるに至って、男子の「天使幻想」が崩壊して、同じ年に伝説的ボーカロイド「初音ミク」が誕生する。

 現実の女の「天使としての価値」が地に落ちた年、初の本格的バーチャル・アイドルが生まれたのが2007年だったのだ。