このところ、老若男女を問わず、人気となっている日本刀。時代劇や映画などでも、有名武将や刀の達人たちは皆、「名刀」を携えている。だが、そもそも「名刀」とは何なのか? 日本の武器や武具史に詳しい京都国立博物館名誉会員の稲田和彦さんに聞いた。
 

「名刀」の定義とは?

 「名刀」という言葉は定義がはっきりしない。専門家でも意見が分かれる。
 諸説あるが現代で名刀と呼ばれるものの多くは「伝来」が重要という考え方が有力だ。もともと刀剣は、単なる武器という価値だけではなく、名刀になると美術品や御神体といった宝物として扱われ、最高の献上品とされてきた。 有力武将や大名は、献上品用に、あるいは自らの権力を誇示するため、誉れ高き刀を探しては収集して大切に保管してきた。

<刀が所有者を選ぶ!>

 例えば戦国時代の武将に人気だったのは、刀工•長船光忠、長船長光、粟田口吉光が作刀したものであった。 これら名刀を贈られた(あるいは奪った)家でも、その価値を承知しているので、末代まで家宝として大切に保管して現在に至っている。
 つまり、美術的価値、霊気的価値、史料的価値だけではなく、さらに名家(有力者)による伝来の歴史、由緒が加味されることで刀の価値は上がると考えられている。
 「刀が所有者を選ぶ」。これは愛刀家の間で言われている言葉である。名刀は、然るべき人々によって数百年も守られてきた歴史の証でもあった。

監修/稲田和彦(いなだ•かずひこ)
京都国立博物館名誉会員。日本の武器や武具史を主に研究。全国各地で日本刀の歴史や魅力を伝える講演活動も行なっている。著書に『近世初期の武器•武具』(小学館)『日本の甲冑』(京都国立博物館)『図説•日本刀大全』(学習研究社)など多数。