意外と知らない腹痛の理由

痛みというのは、体から発せられた緊急警報だ。腹痛も、お腹で起こった何らかの異常事態を知らせるための信号である。ただし、痛みの感じやすさは人によって異なるので、一般化するのは容易ではない。
「腸は、痛みの感じ方の個人差が体の中でも特に大きい部位です。1週間以上排便がないのに、痛みや張りなどの症状を全く感じない人もいます。とはいえ、本当に我慢できないほどの痛みがあるなら、何かしらの病気や異常があると見てよいでしょう」

 そう語るのは、東京都港区「おおたけ消化器内科クリニック」の大竹真一郎医師。
 最も身近な腹痛の原因には、やはり便秘が挙げられる。
「便秘に起因する痛みかどうかを簡単にチェックする1つの方法は、手で抑えたときに痛みを感じるか。大腸が大きく曲がる4カ所は便がたまりやすく、ここを押したときに痛みや張りがあれば便秘のサインと考えられます」(大竹医師)
 痛みの感じ方によって、病状を推測できる場合もあるという。その1つが、強い腹痛を伴うことでよく知られる虫垂炎だ。
「虫垂炎なら右下腹部が痛むのが特徴です。なかでも、押したときよりも、手を離したときのほうが、鋭い痛みが走る状態は要注意。腹膜炎を起こしている可能性がありますので、すぐに診察を受けなければなりません。ちなみに、虫垂炎の初期ではまず、胃の付近に痛みが出て、それから右下腹部に移ります。これは、本来の患部から痛みの信号を送る神経が胃の近くを通るため、脳が部位を誤るから。痛みを感じる部位の直下に病変があるとは限らない典型的な例でしょう」(大竹医師)
 このように患部と離れた部位に起こる痛みは「関連痛」と呼ばれる。強い痛みがあれば、患部や原因を自己判断せずに医師の診察を受けよう。ただし、深刻な病気であっても、必ずしも腹痛のサインが出てくるわけではないことも覚えておきたい。
「特に大腸がんの場合は、自覚できる症状がすぐに起こることはまずありません。早期の段階では、ほぼ無症状です。例え腹痛がなくても、定期的な健診を受けることをお勧めします」(大竹医師)

 お腹を押した手を離すと、ビリビリとした鋭い痛みが周囲に響くように走る。歩いたときにも、その振動で痛みが響く。この場合、虫垂炎などが悪化して、腹膜炎を起こしている可能性がある。腹部全体が硬くこわばるのも特徴。胃や腸などの臓器を覆う腹膜内に細菌が広がっており、最悪の場合は敗血症につながって死に至る。一刻も早く治療を受けなくてはならない。

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