災厄を人の代わりに引き受けてくれた人形に感謝

人形報恩祭で供養するために全国から集まった人形

 5月21日(土)よく晴れた土曜の午後。東京・浅草橋にある東京最古の神社と言われ、鎮座から1900年を越える由緒ある第六天榊神社で、人形を供養する「第5回人形報恩祭」が開催された。

 「人形報恩祭」とは何か? それは「厄災を人の代わりに受けてくれる」といわれる「ひな人形」を始めとする人形たちを丁重に供養することを通じて、これまで無事に育ったこと、今幸せに過ごしていることに対して、人形たちをはじめ、親や祖父母など家族に感謝の気持ちを伝えること。

 この会の主催である久月は、東京浅草橋に本店を構え、江戸時代から続く日本人形の老舗である。久月の社長である横山久吉郎氏は次のように語る。

久月の横山久吉郎社長。「人形の街・浅草橋だからこそ、人形供養の場が必要」と語る。

「何年たっても飽きのこない良い人形を作り続けることが人形造りの原点です。ただ長い年月を経て古くなったものや、生活環境の変化で手元の置いておけなくなった人形を、私どもに供養を依頼してこられる方がどんどん増えてきました。それにしたがって、人形の供養の場を増やすこと、さらには多くの人形店が並ぶ『人形の街』浅草橋で人形供養の催しを行う必要性を感じ、第六天榊神社に相談をし、『人形報恩祭』を春に行うこととなりました」。

 当日は全国から集まった数多くの人形が神社に並んだ。ひな人形・五月人形・日本人形・西洋人形・ぬいぐるみ・こいのぼりなど、それぞれが思い入れの深い品ばかり。

宮司による「御霊抜き」の儀式。

 今まで成長を見守ってくれた人形達に対して御礼を申し上げ、宮司による人形の魂を抜く「御霊抜き」、人の形をした紙の人形を火にくべる「お焚きあげ」など、古くから行われてきた伝統的な儀式が厳かにとり行われた。

 思い入れ深く・長い時間を一緒に過ごした人形は、自分自身ではなかなか処分はできないもの。人形の供養の儀が終了した後も人形との別れを惜しむ参列者もあった。それほどまでに人形は人の気持ちや魂が投入された物なのであろう。

 人形を買い与えられた小さな頃はそこに込められた気持ちがわからず、ただ漠然と過ごしてしまう。しかし、年月を経ることで、今健康でいることや幸せに暮らしていることが、親や祖父母・家族の御蔭であることに思いが至るようになってくる。そんなとき、感謝の気持ちを伝える場や家族の絆を大切にする場として人形供養の儀式は大きな意味があるのだ。

 この「人形報恩祭」は年1回行われる。来年は5月20日(土)開催予定。

久月 http://www.kyugetsu.com