イラスト/フォトライブラリー

風俗嬢がおこなう「パイずり」という性技がある。ふたつの乳房のあいだに客の陰茎をはさみ、刺激するというものである。もちろん、風俗嬢だけがするとはかぎらない。恋人同士でおこなうこともあるだろうが、たいていは男が風俗店で体験し、あるいはAV(アダルトビデオ、DVD)を観て興味を持ち、

「ね、パイずりやってよ」

と、女にせがむ場合が多いのではあるまいか。

パイずりは英語の性語ではTitjobという。本来、パイずりはわが国にはない性技だった。アメリカのポルノビデオなどでTitjobを観た風俗店関係者が、

「おっ、これはおもしろそうだな。さっそくウチでもやってみるか。評判になるぞ」

と、風俗嬢に指導した――。

もしくは、研究熱心で向上心のあるソープ嬢がビデオに触発されて自分のテクニックに採用し、たちまち評判になった――。

これがわが国におけるパイずりの始まりではなかろうか。あくまで筆者の想像だが、大筋では間違っていないと思う。

というのは、江戸の春画にはパイずりは皆無だからだ。

江戸の春画は多彩かつ豊潤である。現代の性技はすべて登場している。江戸の男女は現代人がやる性行為はすべて実行していた。だが、パイずりだけはない。もちろん、男が女の乳首を口にふくんだり、舌でなめたりする「乳吸い」の春画は少なくない。しかし、江戸の女は男にパイずりはしなかった。というより、しようと思っても、できなかった。

かなりの巨乳(英語ではBig Tits)でないとパイずりは無理である。当時の日本の女はみなペチャパイだったからである。

江戸時代、わが国の食生活は質素で、栄養水準は低かった。とくに動物性たんぱく質の摂取が極端に少なかった。そのため、みな背が低かったのはもちろんのこと、女の乳房も小さかった。巨乳の女などいなかったのだ。江戸の性語にパイずりに相当する表現はない。当時の男女には、乳房で陰茎を刺激するという発想そのものがなかった。もし、現代のAVのパイずりを江戸の男に見せれば、「うわっ、なんだこりゃ、化け物だ」と、巨乳に驚くどころか、気味悪がるかもしれない。