合理的な生き方など人工知能に
任せておけ! 
文豪・島田雅彦が炎上覚悟で
もの申す!

「筋金入りのヘタレになれ」ベスト新書最新刊
6月8日発売 

 「産業革命と情報革命を経て、人間は労働と思考を機械に委ね、楽をした分だけ退化した。元々備わっていた身体能力も思考能力も劣化し、健康問題を抱えながらも、長生きだけはするようになってしまった。今、享受している文明が永続的に維持される保証はどこにもないが、震災や戦争など大きなカタストロフ後にもサバイバルできるかどうかが問われたときに、最終的には個々の能力と運しかなくなる。劣化した能力のリハビリをやっておくかおかないかで、将来的に大きな差が出てくる。

 人間だけが持っていると思われていた創造性も、人工知能によって代行される時代が巡って来た。人間界ではわりとヘタレや敗者も生き延びてこられたのだが、人工知能が進化論の原則をよりシビアに踏襲するとしたら、それこそ血も涙もない淘汰を行うだろう。

 長い年月をかけて、思想や哲学を通じて考察されて来た人間の条件がこの先、大きく変わる。人間はこのまま奴隷か、動物園の動物のようになってゆくと思われるが、その前に人間を人間たらしめている理性と狂気について、今一度考えてみるのも一興かと思い、本書を出すことにした。

 

 愚行、虚栄心、性欲、破壊衝動、嫉妬……ビジネス書ではほとんど扱われないテーマばかりを選び、酒場で放談する形式を取った。民主主義崩壊前夜にあっては、酒場の放談こそが、検閲もなく、最も言論の自由を行使でき、ヘタレが一番輝く場だからである。炎上は避けられないだろうが、死なない程度に地雷を踏むのは武勇伝ネタを積み上げたいヘタレのプライドの現れなので、どうか温かく見守ってやってください。
 

島田雅彦(しまだ まさひこ)
1961年東京都生まれ、川崎育ち。東京外国語大学ロシア語学科在学中の83年『優しいサヨクのための嬉遊曲』が芥川賞候補となり、作家デビュー。84年『夢遊王国のための音楽』で野間文芸新人賞。92年『彼岸先生』で泉鏡花文学賞。2006年『退廃姉妹』で伊藤整文学賞、08年『カオスの娘』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。
10年下半期より芥川賞選考委員を務める。現在、法政大学国際文化学部教授。