大学在学中「優しいサヨクのための嬉遊曲」でデビューした文壇のプリンス島田雅彦も50代半ばとなった。そして現在、あまりに右傾化する世の中に対し「俺は敢えて地雷を踏みに行く」とふざけた世の中にモノ申す。合理的な生き方などAIに任せておけ!筋金入りのヘタレに俺はなる。

人工知能(AI)がもたらすのは「希望」か「危機か」

 

────島田先生は、新刊エッセイ「筋金入りのヘタレになれ」の中で、これからの時代の人工知能(AI)に対する考え方も述べられているわけですが。なかでもビジネスや政治に関しては、AIに任せた方がよっぽど効率的であろうと、皮肉的に述べられていますよね。


 AIは誰よりも、金儲けも上手でしょう。最も優れたものが開発されれば最初に資本を押さえちゃいます。現状どの金融企業も株式投資や外国為替取引はすべてコンピュータとプログラム(アルゴリズム)を駆使して行われています。HFT(ハイ・フリークエンシー・トレーディング)といって、それこそ一秒間に何千回という頻度で売買を繰り返すことで利益を積み重ねていくわけです。  
 何マイクロ秒というスピードで勝負している世界ですから、そこにAIが投入されたらどうなるか。おそらく一晩で巨額のカネが調達できるでしょうから、資金は無限にあることになる。
 AIはあらゆる業種、領域とネットワークで繋がっているわけですから、そこを自在にコントロールして生産調整などあらゆる分野のことを最適化していく。
 当然ひとつのAIに全部が牛耳られちゃまずいと考える人間が、保険を掛けようとするでしょうが、そんなことを人間がいくらやってもAIは全部ブロックして、自分の意志が最優先されるようにシステムを構築していく。となれば、人間はそのAIの意思に従って使役されるだけになるわけです。
 企業の経営などもAIがやるようになるでしょう。実際に、もうすでに香港のある金融会社では社長をAIがやっていると聞いています。その流れで行けば、もう為政者もAIでよい、ということになります。

 

 安倍政権の方が、AIより、よっぽど危ない現状

 

 

────政治をAIに任せればもっとも効率的な選択をするだろうということは、分かるのですが逆に少し怖い気もします。


 現代はポピュリズムの時代です。へたすりゃ、安倍晋三とかドナルド・トランプがみたいなのがリーダーになっちゃうわけですから。あんな安倍晋三のような間違いしか犯さないような男が国の行く末を左右するわけですから、こんなリスキーなことはないわけで。
 だからこそ、その暴走に歯止めをかける憲法がキープされなきゃいけないわけですけど。その憲法自体をも、もっとも無能な男がなし崩しにしてしまおうという状況にあるわけですね。となれば、ポピュリズムで支持された、思いつきだけで突拍子もないことをやってしまいそうな人間が政治を行うことに伴う危険を避けるために保険を掛けなきゃいけないと。
「安倍とその不愉快な仲間たち」なんて言われていますけど、これはもう不愉快通り越してギャグとしか思えないですからね。

 例えば、日本人を救助しているアメリカの戦艦を自衛隊が助けるのは違憲じゃないと安倍が言ったら、実は最初からアメリカ軍が戦艦使って日本人を救助するなんあり得ないってことが判って大恥かいた。そこに、お仲間のひとりの中谷防衛大臣が、日本人が乗ってようと乗ってなかろうと、とにかく米艦を守るんだとか言い出したかと思ったら「弾薬は武器じゃない。弾薬は弾薬です!」とか意味がわからないことを言う。

 あと笑ったのが、菅官房長官です。参考人として呼んだ三人の憲法学者全員に憲法違反だと言われて、集団的自衛権行使を全く違憲でないと言う著名な憲法学者もたくさんいると強弁した後に、「たくさん」なんかいないことがバレてそこを突っ込まれたら「数じゃないと思いますよ」と。だったら、最初からたくさんとか言うなよと。小学生かよという話です。

 かと思えば、これは安倍晋三ですけど、原稿用紙で四枚にも満たないポツダム宣言を読んだこともないのに、戦後レジームがどうこう言ってたことがバレて、そこをつっこまれたら、「つまびらかにはしてない」みたいに、ざっとは読んだ的な言い訳したりね。ほんとにかっこ悪い。しまいには、「私が総理大臣としてあり得ないとこう言っているんですから間違いない」とか言い出す始末で。それがいちばん危険だということがわかってないですね。


 権力への風刺を世論が不謹慎だと言い出したら相当に危ない

 

 

────最近は、政治に対する、世論の反応のようなものが一気に変わってきたなと思います。


 まあ、いちいち挙げていたらキリがないのでやめますが、折々の自民党議員の発言というのは、昔だったら完全にジョークの世界ですよ。危ないことを言いまくる右翼ネタで笑いを取っていた鳥肌実という芸人がいますけど、いまはもう首相自らが鳥肌実をやっていますから(笑)。
 ほんとだったらもう笑うしかないんだけども、一国の代表である首相をコケにして笑うのは不謹慎だみたいな、そういう風刺に対しても許容の度合いがかなり低くなってきたかなという気がします。
 だいたい世の中で、そういった風刺だとかボヤキとか批判する声が小さくなってきたら、かなり危ない状況です。要するに政治や為政者に不平不満があったりしたときに、それを芸人や風刺漫画家、あるいは物書きやエッセイストといった連中が当てこすったり批判したりということをさんざんやってきたわけですが、そういうことを視聴者や読者が不謹慎だとみなすようになってきた。これは何度も言うけど危ない状況です。

 自民党の閣僚の8割、9割が所属している日本会議の主張をしていることなんか、ナンセンス極まりない。「いつの時代に生きているんですか?」という話で。もうそんな世界だったら、いっそのことAIに任せておいたほうがよっぽどマシということにもなるでしょう。少なくとも安倍総理と不愉快な仲間たちのような、論理が破綻したギャグみたいなことは言い出さないと思います。

 

────最終的にAIの誕生というのは、人類にとっての希望なのでしょうか。それとも危機なのでしょうか。


 「AI」VS「人類」という構図を作って、人類文明はAIによって滅ぼされる的な、いかにもハリウッド映画的シチュエーションですが、そういうことを言う人はけっこういますよね。
 シンギュラリティ(コンピュータが全人類の知性を凌駕する未来におけるある特異点)が訪れるのは、60年周期で革命が起こるということから考えて、コンピュータが一般化されたのが1990年代と考えれば、だいたい2050年、前倒しがあったとして2040年くらいじゃないかと思います。
 例えば、ホリエモンはそうやってAIが発達することによって人間は働かなくてよくなるといった見方をしているようですが、基本、人間がやらなくてもいい仕事というのは格段に増えるということはすでに言われていますよね。
 しかし雑事や面倒な仕事から開放されてみんなハッピーというユートピア論的な未来予測というのは、たいてい外れます。
 明るい未来を語らないと投資が集まらないので、多くの経営者や企業家はそういった聞こえのいい事を言うものなんですが、だいたい未来予測は絶望的な方向に傾けておいたほうが当たるものなんです。

                <聞き手・白崎博史/写真・髙橋亘>