突然ですが、人に想いを伝えるのって難しいと思いませんか? 「そんな意味で言ったんじゃないのに……」と落ち込んだり、「なんで私の気持ちを理解してくれないの?」とモヤモヤしたり、ということは誰しも味わった経験があると思います。だからこそ、書店にはトークスキルや文章力を向上させるような実用書があふれています。書道家・武田双雲氏の新刊『伝わる技術』(ベスト新書)にも、そうした悩みを解決するような「伝達力」アップのハウツーがたくさん詰まっています。ただ、本書が他の本と一線を画すのは「伝える」ことではなく、「伝わる」ことに注目している点。そこで、今回はタイトルに込められた思いを武田双雲氏にうかがいたいと思います。

「伝える」ことは、「伝わる」ことじゃない

 「伝える」と「伝わる」。
 一見、似ていますが、二つの言葉の間には大きな違いがあります。
 “目線”です。
 「伝える」のほうは、誰かに受け止めてほしいという願いを抱きながら、自分の意思を発信すること。「伝わる」のほうは、自分が発信した情報を、相手が受け止めることですよね。つまり「伝える」が自分目線で、「伝わる」は相手目線の言葉なんです。
 たとえば、あなたが「この間観た映画、最高に感動的で、もう10年ぶりくらいに映画館で泣いたよ」と誰かに話します。これが「伝える」。
 あなたの言葉を相手が「へえ! それはすごいね。どんなストーリーだったの?」と受け取ってくれたとしたら、こっちが「伝わる」です。
 キャッチボールでいうならば、あなたがボールを投げた状態が「伝える」。投げたボールを相手がキャッチした状態が「伝わる」ですね。
 キャッチボールには、いくつかのコツがありますが、基本中の基本は、「受け手がとりやすいボールを投げること」に尽きます。
 具体的には相手の胸元、もっともグローブを掲げやすい位置に、速すぎず、遅すぎないボールをまっすぐの軌道で投げる。すると、受け手はムリなくキャッチすることができます。「バシン!」といういい音と共に、受け手のグローブに収まって、気持ちがいいんです。
 キャッチボールで投げるべきは、自分が投げやすいボールではない、ということです。

受け手がとりやすいボールを投げることが大事
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