・「ヘイトスピーチ解消法」に一定の効果、見ゆ

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 さる5月24日、衆議院本会議でいわゆる「ヘイトスピーチ解消法」が賛成多数で可決、同6月3日に同法が施行されたことは、我が国におけるヘイトスピーチ対策における画期である。
 これを受け、矢継ぎ早の展開が全国各地で続いた。神奈川県川崎市では、同県川崎市が民間団体が主催する在日コリアンなどへのいわゆる「ヘイトデモ」に供する公園の使用許可を認めなかった。
 これに対抗する形で苦し紛れに開催された同団体のデモは、神奈川県警により一旦は道路使用の許可が降りたものの、反ヘイト団体らの抗議に遭い、開会直後に中止においこまれた。警察による中止要請も奏功した。
 神奈川県警に限らず、全国各地の警察も「ヘイトスピーチ解消法」施行を受けてヘイトデモへの厳正対処の方針を打ち出しており、川崎の事例はこの効果が覿面であったことを示す。

「朝鮮人を海に叩き込め」「在日(コリアン)はゴキブリ、人もどき、糞食い土人、嘘つき人種」などの眉をひそめるヘイトスピーチが社会問題と化したのはゼロ年代中盤、『在日特権を許さない市民の会(通称、在特会=当時の会長・通名、櫻井誠)』などのネット発のヘイト団体が跳梁跋扈したからであるが、この「ヘイト解消法」は、このようなゼロ年代からの風潮に一定程度の効果があったことを如実に物語っており、評価できるであろう。
 実際、6月9日に実施された政治系老舗データサイト『政治山』の世論調査によると、「ヘイトスピーチ解消法」を受けた川崎市の「公園使用不許可」に対する川崎市の判断への支持は、実にその61%が「妥当」と回答しており、「行き過ぎ」の約38%を大きく上回った。
 いわゆる「ヘイトスピーチ解消法」とそれをめぐる行政の対応には、一部のネット保守や、それに支持される一部CS放送局ら主催による「反ヘイト法廃案」デモ活動にもかかわらず、大多数の物言わぬ日本人世論の常識による圧倒的な支持が、この法律の後背に付帯しているとみなすのが正当であろう。

 2020年の東京五輪を控え、多数の外国人観光客が訪日することが予想される。そのような状況の中、根拠なき外国人(特に、在日コリアン、韓国人、中国人)への排斥を声高に主張するのは、西欧自由主義国家に対する日本の精神的後進性を露見する恐れがあり、国威の観点から言って好ましくない。

 

・日本の国益を害するヘイトスピーチ

「在日(コリアン)は半島に帰れ!糞食い嘘つき犯罪者!」という、ネット上のデマに基づく声を公の場所(公園や道路)などで野放図にすることは、日本が寛容性という点において、精神的に劣後していることを国際社会に公言するのと同じであり、国益のためにも規制されるのが相当である。
 このような「ヘイトスピーチ」の多くが、事実に基づかない。「在日朝鮮人は戦後、100万人の日本人を殺した」「在日朝鮮人は税金が無料で、脱税のし放題」―。すべてネット発のデマで事実ではない。「在日特権」とされる事例のほとんどは、ゼロ年代初頭に隆盛した『同和利権の真相』(宝島社)の中にある、「被差別部落」を「在日(コリアン)」に読み替えた嘘とデマの混交である。
 在日コリアンの犯罪者は、日本の司法官憲に摘発され、脱税者は追徴課税され、刑務所に送られている。在日コリアンのパチンコ経営者で、追徴課税や脱税で逮捕された経営者は数知れない。「在日特権」など存在していない。在日コリアンよりも、はるかに日本の司法官憲の方が強大な権勢と権力を握っている。日本は、日本人が人口比率で圧倒的にマジョリティーなのだから当たり前の力関係だ。
「特権」をいうなら、駐留米軍(と軍属)にかかわる恩典の方がはるかに「特権」だが、それには触れない。卑小な心理といえよう。

 本来ならばこの手の人々の「狂言」は自助努力で廃絶に向かわしめるのが健全であるが、いったん火が付いた「ヘイトスピーチ」は、もはや法によってしか鎮火できない領域にまで進出してきた。
 根拠なき嘘とデマで在日外国人その他を呪詛する発言を野ざらしにするのは、日本が精神心的後進国であることを国際社会に露呈することになり、国益を害する。アジアで最も進んだ資本主義国であり、かつ有色人種最初の工業国である歴史を有する日本から、同じ有色人種を呪詛する発言が公にできることを許容してはならない。20世紀、様々な局面で欧米の人種差別に立ち向かった、明治の祖霊が泣いているぞ。

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