突然ですが、人に想いを伝えるのって難しいと思いませんか? 「そんな意味で言ったんじゃないのに……」と落ち込んだり、「なんで私の気持ちを理解してくれないの?」とモヤモヤしたり、ということは誰しも味わった経験があると思います。だからこそ、書店にはトークスキルや文章力を向上させるような実用書があふれています。書道家・武田双雲氏の新刊『伝わる技術』(ベスト新書)にも、そうした悩みを解決するような「伝達力」アップのハウツーがたくさん詰まっています。そこで双雲さんが、人になにかを伝えるうえで一番気を付けていることについてうかがってみました。

会話でもまずはチューニングが必要

 チューニングとは、日本語でいう調律のこと。
 バンドやオーケストラが、それぞれの楽器を調律して、音程を正しく合わせることを指します。
 ちなみに、いくら上手なギタリストと巧みなベーシストがバンドを組んでも、2人が使う楽器のチューニングが合っていなければ、バンドの音は聴けたものではありません。
 響くべきドレミの音が合っていなければ、雑音にしかならないからです。すごく気持ち悪い。
 しかし、チューニングが合った状態で、それぞれの楽器を持ち寄ってセッションすると、超~気持ちいいんです。多少、演奏がヘタでも、ピタリと調子が合って、心地良い。
 これは、会話においても同じです。
 お互いがどんな音を出すのか。どんなタイプなのか。わからないまま、いきなり本筋の話をはじめても、その言葉が本当に相手に届くかはわかりません。相手がどんなことに興味があって、どんな言葉が響くのか、そんなチューニングが済んだ状態でなければ、個性ある人と人が対話することは、なかなかに難しいことなのです。

いい音を奏でるにはチューニングが必要なように、いい会話をうむためにも、チューニングが大事。
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