年金も介護制度も行き詰まり、野垂れ死にが普通になる時代が一度は来る。その時、自分を誰とも比べず、「私はこれでいい」と言える覚悟があるか。作家の曽野綾子氏と、がん放置療法で有名な近藤誠医師のお二人から学ぶ。


 2015年9月20日、厚労省が発表した数字によると、65歳以上の高齢者の数は、前年より89万人増えて3,384万人。対総人口比は0.8ポイント増の26.7%で、人数、割合ともに過去最高を更新した。
 また、80歳以上の高齢者は38万人増の1,002万人(総人口の7.9%)で、史上初めて1千万人を超えた。
 がん放置療法で有名な近藤誠氏と作家の曽野綾子氏は、2014年に出版された『野垂れ死にの覚悟』(KKベストセラーズ)の中で、増え続ける高齢者の問題に関し、次のように発言している。
 

近藤……すでに独居老人が全国に500万人もいて、『団地孤立死』なんかしょっちゅう起きていますよね。団塊の世代の熟年離婚も多いし、状況はどんどん厳しくなります。みんな、これからは野垂れ死にが普通になると思ってないと。
曽野 おっしゃる通りです。……最近『二〇五〇年』という小説を書いたんです。看る人がいなくて、老人はぜんぶ野垂れ死に。私ね、ものごとの悪いほうだけ、ありありと見えるんです。良いほうはあまり見えないんですけどね。
 主人公は75歳で、妻に先立たれて、持ち主のいなくなった宅地跡に住んでいる。そういう年寄りはすぐ強盗に殺されるから、うちを捨てて人のいない荒地に隠れ住む、という想定です。嫌な場面があって、若者が老人ホームに火をつけて『年寄りを一挙に何人始末できた』って手柄にする。そういう話です。

曽野綾子氏 (撮影・小野庄一)

近藤 それはありえますね。人口のことを考えてもね。僕が属している団塊の世代以降、がくんと人口が減っていく。老人の数も減っていきます。
 
それで政府や関係者が何を考えているかっていうと、いま介護事業にお金を費やして箱モノを作って人を雇っちゃうと、団塊の老人がいなくなったあと、入る人がいなくなる(笑)。
曽野 だから自宅でなんとかしろ、ですか?
近藤 そう、介護事業にはもう金も人手もかけられないから在宅でやってくれって、いま盛んに在宅誘導をしているわけです。

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