人に何かを伝えるとき、その内容は必ずしも「いいこと」だけではありませんよね? 言いにくいことを伝えなければいけないとき、注意をしなければならないとき、叱ることが必要なとき……イヤなことを伝えるのは苦労するものです。書道家の武田双雲氏も、自身が主宰する書道教室の生徒さんに指導する際に、そうしたシーンに出くわすことは多々あるそう。では、そんな時、武田双雲氏はどんなことに気を付けているのでしょうか? 最新刊『伝わる技術』(ベスト新書)を上梓した武田双雲氏に聞いてみました。

◆叱るとき、注意するときは「ジコチュー」に

 子供や後輩、部下などを注意したり、叱ったりしなければならない。
 親や先輩、上司となると、どうしてもそんなシチュエーションに出くわします。
 もちろん、基本的には叱ったり注意したりすることがないのがベスト。ですが、たとえば、子供が他のお子さんを傷つけてしまったり、子供自身が事故や事件に巻き込まれるような危ない行為をしてしまったりしたときには、二度とそんなことをしないように、しっかりと教える必要があります。
 また部下や後輩が、不正などを働きそうになったときは、厳格に注意しなければいけないでしょう。
 けれど、こうした注意を促すような声がけが苦手な人、多いですよね。
 何か妙に上から目線になってしまったり、注意というより激昂するように怒鳴ってしまったり、あるいはやはり「嫌われるのではないか」と意識しすぎてしまったり、というわけです。
 僕はほとんど人を叱ることがありませんが、どうしても、書道教室の子供たちなどに、「そういうことはしないほうがいいよ」ということを教えるために、少しだけ叱らなければいけないときは、必ず「ジコチュー叱り」をするようにしています。
 自己中心的に叱る、のです。
 たとえば子供たちに「おい! そんなところに行ったら危ないだろ!」と叱らずに「おいおい。そんなところに行くと危なくて、“先生が”ヒヤヒヤしちゃうから、やめてくれー!」と伝える。
 たとえば部下に「“お前は”、いつもだらしない格好をしているな! ちゃんとしろ!」と注意せずに、「そんなだらしない格好をしていると、お前のことを買っている、“オレが“残念な気持ちになってしまう。やめてほしい」と伝える。
わかりましたか?
 どちらも「あなたの言動がダメ!」ではなくて、「私が、あなたのその言動がイヤだ」としている。主語を相手にする「YOUメッセージ」から、主語を私にする「Iメッセージ」へと、同じ注意を促す言葉だけれど、変えているというわけです。
 Iメッセージは、あくまでいっている側の感想だから、冷静に受け止められやすくなります。少なくとも「キライだから文句をいっている」のではないことが、明確に伝わりやすい。結果として、耳に痛い意見も、YOUメッセージよりは受け入れやすくなる、というわけです。

激昂しても意味はありません(写真/書籍編集部)
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