あらゆる病気は腸内フローラと関係している
 

「いつまでも腸年齢が若く、年を取っても元気なままでピンピンコロリを目指すなら、50〜60代にどんな生活をするかが重要なポイントです」

 

そう語るのは、理化学研究所で40年以上腸内細菌の研究を続けてきた辨野義己さんだ。というのも老化をはじめ、がん、糖尿病、動脈硬化、認知症ほか、ありとあらゆる病気の原因は、腸内フローラと密接な関係にあるからだ。免疫システムが発達し、細菌が生育しにくい小腸が、病気になりにくい臓器ナンバー1なのに対し、病気の種類が最も多いのは大腸。それはつまり、腸内細菌をうまくコントロールすれば、どんな病気も防げることを意味する。

 

「日本人の死因のトップになりつつある大腸がんも、10年前の食生活が原因になります。超高齢化社会となった今、もはや病気になって慌てて病院に駆け込む時代ではありません。増え続ける国民医療費を軽減するためにも、自分の健康は自分で守るという意識が大切です。病気にならないで元気に長生きするか、寝たきりになるか、その分かれ目は今でしょ?(笑)。60歳で気付けば、充分間に合います。今すぐ整腸力を鍛える生活を始めましょう」

辨野さん自身、50歳を過ぎた頃に体重が88㎏、体脂肪率が34%にもなり、コレステロール値は基準値を大幅に上回る400㎎/㎗以上に。腸内を調べたら、悪玉菌が増えていた。「このままではマズい」と一念発起し、ヨーグルトと野菜中心の食生活に変えて運動も始めたところ、見事10㎏の減量に成功し、腸内環境も改善した。

 

「以前は肉とお酒が大好きで、嫌いな物はヨーグルトと野菜だった(笑)。でも、今では毎朝、ヨーグルト400㎖に豆乳200㎖、バナナ1本、抹茶、はちみつをミキサーにかけて飲んでいます。食事はたっぷりの野菜と玄米、めかぶ、納豆などをよく食べますよ」

 

ヨーグルトは、悩みの種だったひどい花粉症が改善されるという嬉しい効果ももたらした。腸内には、ウイルスや病原菌をシャットアウトする強力な腸管免疫システムが発達しているが、腸内環境が悪くなるとこのシステムに狂いが生じ、本来は体に有害ではない花粉や食物に対して過剰な攻撃をする。それがアレルギー反応だが、乳酸菌・ビフィズス菌には腸内フローラを改善するとともに免疫細胞を活性化する力があるため、腸管免疫システムが正常に働くようになったと考えられる。

 

では、自分の腸内環境を判断するには、どうすればよいのか?

 

「それは、自分の便を見ることです」と辨野さん。
「便所は、体からのお便りを受け取る所。自分の健康状態が、最もよくわかる場所なので、見ないで流してしまうのはもったいないです」というのだ。

 

大切なのは、3つの排便力。まず、作る力=いい便を作る元になる食物繊維が豊富な物を食べること。次に、育てる力=善玉菌が優勢な腸内環境をキープするために、乳酸菌・ビフィズス菌などによる発酵乳やオリゴ糖入りの食品を摂取すること。最後に、出す力=腸内の便を押し出すためにインナーマッスルである腸腰筋を鍛えること。この3つを基本にこれからの日々を送れば、さまざまな病気を未然に防ぎ、健康長寿をまっとうできるはずだ。

 

整腸力をアップする3つの「排便力」

①作る力 お通じのもとになる食物繊維を摂る
②育てる力 善玉菌を増やす発酵乳などを摂る
③出す力 インナーマッスル(腸腰筋)をきたえる

 

監修:辨野義己さん
理化学研究所イノベーションセンター推進センター特別招聘研究員
1948年。大阪府生まれ。農学博士。専門は腸内環境学、微生物分類学。DNA解析により、新たな腸内細菌を発見し続けている。『免疫力は腸で決まる』『腸内フローラが病気を防ぐ』など著書多数。