イラスト/フォトライブラリー

以前、ある人から、「江戸にイメクラのような風俗店はあったか」という質問を受けた。その場でお答えしたが、ここであらためてまとめてみよう。

現代性用語辞典のたぐいで調べると、イメクラはイメージクラブの略で、客の妄想をかなえてくれる風俗店とある。つまり、客の要望に応じて風俗嬢がセーラー服を着たり、メイドの制服を着たりして場面を設定し、相手をしてくれる。もちろん、どんな衣装であれ場面設定であれ、最後にすることは「射精」であり、その意味では射精産業に違いない。

で、江戸にイメクラはあったか? 答は、あったといってよいであろう。時代によって表面的な風俗こそ変化するが、人間の本質は変わらない。こと性に関するかぎり、現代人がしていることは江戸の男女もしていたし、江戸の男女がしていたことは現代人もしている。違いは表面的なものにすぎない。

江戸では、さしずめ女の「役者買い」がイメクラにあたるであろう。当時、大店の後家や、江戸城・大名屋敷の奥女中など、裕福な女が歌舞伎の若手の役者を買うことがあった。役者は事実上の売春夫だった。女が男を買い、「金を出すから、たっぷりと堪能させておくれ」というわけである。

役者買いの場は、芝居小屋の近くにある芝居茶屋の二階座敷が多かった。近いため、役者は芝居の幕間に抜け出てきた。当時の幕間は長かったこともある。充分に情交の余裕はあった。

このとき、たとえば役者に『義経千本桜』の源義経の衣装のままで来るように要望すれば、客の女は義経と色事をするという妄想を実現できる。あるいは、『仮名手本忠臣蔵』のお軽の扮装で来てもらえば、女同士の同性愛で始まり、最後は男と女の関係になるという倒錯した官能の世界を実現できる。まさに役者買いは現代のイメクラと同じではなかろうか。

また、女が男に奉仕させるわけだから、役者買いはいまのホストクラブにも当たるかもしれない。