肉中心の食生活が発がん性物質「二次胆汁酸」を作る
 

今や日本人の死因トップとなった「がん」。二人に一人はがんになる時代と言われるが、特に大腸がんは増加の一途をたどり、部位別に見ると女性は第1位で、男性は肺がん、胃がんに次いで第3位。今後さらに倍増するだろうと見込まれている。大腸がんと食生活の関係について、理化学研究所で40年以上腸内細菌の研究を続けてきた辨野義己さんに聞いた。

 

「大腸がんの発症には、食生活が大きく影響しています。2007年にアメリカで発表された〝大腸がんのリスクを上げる要因〟として、肉とアルコールの過剰摂取、野菜不足、運動不足が挙げられていますが、これは腸内環境を悪化させる生活習慣と重なります」

 

辨野さんによると、1960年以降、日本人の食生活で最も変化したのは、肉類の消費量だ。かつて一人当たりの年間消費量はわずか5・1㎏だったのが、今や29・1㎏と6倍近くに!

 

「動物性脂肪を摂ると、それを栄養分とするために、体内では消化・吸収を促す胆汁が分泌されますが、肉類を摂り過ぎてしまうと、胆汁が過剰に分泌されて、その一部が大腸に流れていき問題が起こるのです」と辨野さん。

 

大腸にいる腸内細菌の中には、その過剰な胆汁を発がん促進作用のある二次胆汁酸に変えてしまう細菌がいるため、大腸がんのリスクが高まるのだ。

 

「胆汁を発がん促進物質に変えてしまう腸内細菌は、これまでに6種類が見つかっていますが、そのうち強い作用を持つ3種類の菌は、私が最初に発見して報告しました」

 

さらに肉食中心の食生活は、腸内に悪玉菌を増やすので、腸内腐敗を起こして発がん物質を作り出す。肉好きで便秘がちという人は、要注意だ。辨野さんは、「肉ばかり食べ続けると腸内環境はどうなるか」を知るために、若い頃自ら人体実験をしたそうだ。

 

「毎日1・5㎏の肉を40日間食べ続けました。腸内環境の変化は、うんちを見れば一目瞭然。黄色がかった色だったのが、日を追うにつれ黒ずんできて、40日目には真っ黒になりました。しかも、その臭いこと。体臭もきつくなり、肌も脂ぎってきました。腸内細菌を調べると、明らかに善玉菌の勢力が弱まり、悪玉菌が優勢になっているのがわかりました」

 

悪玉菌の勢力が強くなると、日和見菌も影響を受け、悪い働きをするようになる。しかも、善玉菌が優勢のときには、腸管免疫システムが正常に機能して、がん細胞や有害物質をやっつけてくれるのに、腸内フローラが乱れてしまうと免疫力が下がり、がんが発症しやすくなってしまう。

 

肝臓がんも、腸との関わりが指摘されている。2013年、日本の公益財団法人がん研究会の研究チームが、肝臓がんと腸内細菌に関する研究を『ネイチャー』に発表。肥満の人に多いことが知られている肝臓がんだが、高脂肪食を与えて肥満させたマウスでは、2次胆汁酸を産生する腸内細菌が著しく増えて、肝臓の細胞が老化した。ところが、腸内の悪玉菌を死滅させると肝臓がんの発生率は低下したという。

 

「がんを予防するには、肉の3倍以上の野菜を食べることがポイント。目安として毎日緑黄色野菜150gと淡色野菜200gの計350gです。生より煮たり炒めたりしてカサを減らすといい。だいたい1日小鉢5皿分と思えば、無理なく食べられる量でしょう」

 

こんな生活が大腸がんをまねく

1 肉の食べ過ぎ
2 野菜を食べない
3 運動をしない
4 酒の飲み過ぎ

 

監修:辨野義己さん
理化学研究所イノベーションセンター推進センター特別招聘研究員
1948年。大阪府生まれ。農学博士。専門は腸内環境学、微生物分類学。DNA解析により、新たな腸内細菌を発見し続けている。『免疫力は腸で決まる』『腸内フローラが病気を防ぐ』など著書多数。