7月9日に最新刊『99%の会社はいらない』(ベスト新書)を発売する堀江貴文氏は、岡田斗司夫氏とともにSFアニメ企画を始動。そんな岡田斗司夫氏に「なぜホリエモンはカリスマになったのか?」をうかがいました!

「前期」と「後期」のホリエモンはまるで別人

写真/柚木大介

 今の日本で誰がカリスマかと問われれば、堀江貴文、通称ホリエモンの名前が上がるんじゃないでしょうか。
 ライブドアというIT企業を興し、テレビ局の買収を仕掛けたりしたけれど、なんだかよくわからない容疑で逮捕、実刑判決を受けて収監。どん底にまで転落したかと思いきや、出所後に返り咲き、いつの間にかいろんなテレビ番組で顔を見るようになった……。
 これが一般の人が何となく知っているつもりでいるホリエモン像でしょう。
 けれど、ホリエモンがどうやって成功したのかは、あまり理解されていません。確かに彼はたくさんのビジネスを手がけて成功させていますが、成功した実業家というだけなら、ほかにもたくさんいますよね。
 私の分析するところ、ホリエモンはライブドアの社長だった「前期」と出所後の「後期」では、まったく異なるビジネスをやっている、いや根本的に異なる存在になっているんです。
 彼の「ビジネス」の変遷を追うことで、カリスマビジネスの本質が見えてきます。

 前期ホリエモンは、ライブドアの社長でした。彼にとって一番大事だったのは、ライブドアがいかに利益を出し成長していくのかということ。
 当時の彼はテレビに出て「想定内」だとかいろいろな発言をしては物議をかもしていましたが、あくまでも彼にとっては余興です。結果としてライブドアの宣伝になればいいけれど、発言の主旨を誤解されても彼は気にしませんでした。本業であるライブドアのビジネスには関係ないじゃん、それが彼のスタンスでした。
 ところが、現在の後期ホリエモンは違います。テレビ番組では言いたい放題に見えるものの、発言内容には細心の注意を払っていますし、本を書いたらその宣伝をメルマガやツイッターで実にマメに行っています。ツイッターでの発言が誤解されたら、「それは違う」とすぐに打ち消す。
 前期と後期で、ホリエモンはまったく違う人間のようです。なぜ彼は、これほどまでに行動を変えてしまったんでしょう?
 前期ホリエモンは、資本主義社会においてITビジネスを手がけていた。
 後期ホリエモンは、評価経済社会においてカリスマビジネスをやっている。
 これが私の見立てです。

 

人気によって、企業の株価や資産が大きく変動する

 前期ホリエモンは、証券取引法違反で有罪になり、2年6ヵ月もの実刑判決を言い渡されました。事件の詳細については、彼自身がさまざまな著作の中で語っていますから、それらを読んでいただくのがよいでしょう。
 ぽっと出のベンチャー企業社長が、球団やテレビ局の買収といった既存の権威を脅かす「だいそれたこと」を仕掛けようとして、あちこちの「偉い人」に睨まれた。そして、半ば陥れられるような形で、刑務所に送られた。私は、ライブドア事件をこういう風に理解しており、大筋は外していないと思っています。
 それでは、刑務所に送られたホリエモンは、過去の自分の行状を反省したのでしょうか? あるいは、自分を刑務所に送り込んだ奴らに復讐しようと考えたのでしょうか?
 答えはそのいずれでもありません。刑務所で彼が没頭したのは、新しいビジネスモデルの創造でした。
 前期ホリエモンもメルマガを発行してはいましたが、それは余興のひとつでしかありませんでした。ところが、刑務所に入ってからはものすごい分量のメルマガを毎週1回、休むことなく出すようになります。
 私が知っている限り、刑務所にいながらコンテンツをハイペースで生産し、新しいビジネスモデルを作り出したのは彼くらいしかいません。

 ホリエモンは、なぜメルマガをビジネスにしようと思ったんでしょう?
 先にも述べたように、前期ホリエモンはあくまで余興としてテレビなどのメディアに露出していました。けれど、彼がメディアに出るたび、ライブドアの株価が上下する。
 株価が上下するのは、大勢の人が「ライブドア株は買いだ」とか「売りだ」とか思うということ。ホリエモンの人気によって、ライブドアの株価やホリエモン自身の資産が上下するということなんですね。
 彼はこういう現象を目の当たりにして、「評価」が「お金のように振る舞う」ことを理解するようになったんじゃないでしょうか。

 

*編集部注……有限会社オン・ザ・エッヂは、2002年に経営破綻した旧ライブドア社から営業権を取得。 2004 年に株式会社ライブドアに商号を変更した。