夏を目前に、ダイエットを始める方が多いのではないでしょうか。脂肪を燃焼させる有酸素運動や、筋肉量を維持する無酸素運動はもちろん、最近特に注目を集めている「糖質制限」を取り入れてダイエットに取り組む方も少なくないでしょう。しかし、過度な糖質制限には「実は健康を害してしまう」危険がつきまとう、と37年のキャリアをもつ糖尿病専門医・牧田善二先生は指摘します。『日本人の9割が誤解している糖質制限』の著者でもある同氏に、糖質制限にまつわるリスクについてお話を伺いました。

◆糖質制限が必要なのは誰か?

糖質さえ控えれば、肉も魚も食べてOK! な糖質制限。実は気をつけなければならないリスクとは?

 ここ数年ブームになっている「糖質制限」。特別な道具も費用も必要なく、食事に気をつけるだけで誰でも簡単に始められるメリットがあります。しかしその一方で、糖質制限のメカニズムについてきちんと知識のある方は実は多くないかもしれません。本来の目的や効果を正しく理解しないまま、素人がむやみに取り組むことは非常に危険、と牧田先生は指摘しています。
 牧田先生は「糖質制限は一種の医療行為」である、と言います。果たして医療的な観点から、糖質制限をする必要があるのはどのような人なのでしょうか。
「答えを簡単に言えば、(糖尿病にかかっていない人で)“太りすぎ”の人以外にとってはまったく必要がありません」(牧田先生)
さらに、
「太りすぎは生活習慣病をはじめ重大な疾病を招きやすい。だから太りすぎの人は糖質制限に取り組み、適正体重まで減量をすべき」と言います。

◆確実に効果があるからこそはまってしまう
 だからこそ、「太りすぎ」でない人が糖質制限に取り組む際は、注意が必要です。
「糖質制限は、太りすぎている人が体重を落とすのに適した方法であり、血糖値もコントロールできます。しかも、やればやっただけ確実に効果が実感できる。そのために、“もっと、もっと”とはまっていく。その結果、健康を害するほどにやせすぎてしまう人もいる」(牧田先生)
 確実にやせられる方法だからこそ、糖質制限の必要のない人は特にやせすぎないように注意すべきだと言えます。

◆やせすぎは糖尿病よりも怖い
 では、適正体重の人が過度に糖質制限を行いやせすぎてしまった場合、どのような健康上の悪影響がでてくるのでしょうか。
貧血や甲状腺機能低下のほかにも、やせすぎることによって白血球の減少が起こりやすくなります。白血球が減れば免疫力が落ちる。また、やせすぎると認知症のリスクが高くなることもわかっています。低血糖気味になることで、脳に栄養(ブドウ糖)が行き渡らなくなるからです。このように、やせすぎると、体力や気力の低下に加え、いろいろな病気にかかりやすくなるのです」
 牧田先生のクリニックを訪れた患者さんの中には、やせすぎて階段が上れなくなってしまった方もいたそうです。その方は「四五歳の男性」で「身長は一八〇センチ」もともと「体重は七〇キロ前後」で充分にスマートな体型だったそう。しかし、健康診断で糖尿病の疑いがあることを指摘されて自己流で糖質制限を開始。ついには五〇キロを切ってしまい、脚の筋肉に力が入らず、三階までの階段が上れなくなってしまったのだそう。
「ハードな糖質制限を続けていると、脂肪も底をついて筋肉をエネルギー源とせざるを得なくなります。その結果、階段も上れないほど筋肉が減ってしまうという状況になる」(牧田先生)

 いかがでしたでしょうか。「糖質制限」は「一種の医療行為」であり、素人の方が行うにはさまざまなリスクがつきまといます。これらをよく理解したうえで、適切に取り入れてみましょう。
<『日本人の9割が誤解している糖質制限』より>