赤ピーマンにはビタミンCが、ニンジンにはβ‐カロテンが豊富……など、それぞれの栄養素の多い野菜についてはよく知られているが、各種栄養素のバランスに優れた野菜についてはあまり知られていない。そんななか、米国の研究機関によって「栄養素密度が高い」野菜が判定された。そのトップになったのが「クレソン」だった。
監修/吉田企世子(女子栄養大学名誉教授、農学博士)
 

「最強野菜」クレソンは、明治時代に日本に持ち込まれた。繁殖力が強く、各地で根付いて「オランダガラシ」「たかな」「みずがらし」とも呼ばれ、おひたしなどで食べられる。

クレソン特有のほろ苦さとツンとくる辛さは、辛味成分シニグリンによるもの。この成分が、肉の脂肪の消化を促し、胃もたれを防いでくれる。

 

 肉料理の皿に添えられることの多いクレソンは、意外にも栄養たっぷりの・スーパー・ベジタブル・だった――。アメリカ疾病予防管理センターCDCの機関誌『慢性疾患予防』に発表された、ある研究が一部で話題となった。

 その研究とは、「17種類の必須栄養素が豊富な野菜と果物41品目」というもの。総体としての栄養素密度を数値化するため、たとえば、レモンのようにビタミンCの含有量が突出して多いものには上限を設けてある。その結果、最も栄養素密度が高いと判定されたのが、クレソンだという。

「さまざまな栄養素を加味したスコアというものは、見たことがありません。食べ物の栄養を考える上で、ひとつの目安にはなるでしょう。料理適性の評価が加わると更によいのですが」

 と語る野菜の栄養研究における第一人者の吉田企世子先生。1位となったクレソンの健康効果とは。

「クレソンは、免疫力増加や肥満防止に役立つフィトケミカルと呼ばれる機能性成分も豊富です」

 たとえば、クレソンに多く含まれるβ-カロテンは体内でビタミンAに変化して、活性酸素から細胞の酸化を防ぎ、美肌、動脈硬化、高脂血症、がん予防、老化防止などに効果がある。また、辛味成分のシニグリンは食欲を促してくれる。

 とはいえ、食品に含まれる栄養成分は健康によいさまざまなはたらきをするが、それはラットなどを使った実験の結果が主である。人間に置き換えるなら、膨大に食べなければ予防効果は望めない。過剰に摂取するよりも、

「栄養効果が高い野菜を賢く食べることがたいせつ。たとえば、栄養が豊富で、しかもおいしい旬の野菜を選ぶことが健康への近道です」

 と、吉田先生は強調する。

 

 

「クレソン」(和名 オランダガラシ、英名ウォータークレス)

各種ミネラルが豊富なスーパー・ベジタブル

 

【主な栄養成分】

ビタミンC 26mg /鉄 1.1mg /カルシウム 110mg /カリウム 330mg /β‐カロテン(ビタミンA) 2700㎍ ※五訂 日本食品標準成分表

ダイコンなどにも含まれているシニグリンという辛味成分が、食欲を増進させる効果をもち、消化を助ける。利尿作用もあり、血中ナトリウムのバランスを調整して高血圧を予防するカリウムも多い。

 

【主な効用】

消化の促進/食欲増進/動脈硬化予防/抗ストレス/免疫力強化/高血圧予防

骨を生成するカルシウムや、美肌効果のあるβ‐カロテンなどを豊富に含んでおり、可食部100・あたりの含有量は、緑黄色野菜の中でもトップクラス。ビタミンCやカリウムなどのミネラル分も豊富。

 

【クレソンの意外なはたらき】

視力回復●視神経によいビタミンAに変化するβ-カロテンが豊富なので、疲れ目、視力回復によい。

美肌●肌の潤いを保つはたらきをするβ-カロテン、ビタミンCが多い。

発毛●シニグリンは頭皮に脂質が溜まることを防ぎ、血行を促進して育毛をサポートしてくれる。

口臭予防●クレソンの辛味成分シニグリンが持っている強い殺菌作用で、口臭の予防効果もある。

老化・生活習慣病予防●抗酸化機能の高いβ-カロテンのはたらきで、細胞の劣化を抑え、生活習慣病を予防する。

脂肪代謝の促進●辛味成分シニグリンには食欲を増進し、消化を促進する作用がある。

血流改善●β-カロテンに、動脈硬化を防いで血行を促進し、高脂血症を改善する作用がある。

 

【体においしい食べ方】

おひたしにするとたくさん食べられる。硬い茎から先に茹でて、水溶性のビタミンCを損なわないよう、なるべく短時間で引き上げること。サラダやスープなら栄養素は損なわれない。