合理的な生き方。そんなものは、すべて人工知能に任せておけ。 小説家・島田雅彦が語る文学、政治、サヨクとウヨク、酒、旅、恋愛……このふざけた世相を生き抜くためのサバイバル・テクニック 第4回
 

ポピュリズムは民主主義の成れの果て

――参議院選挙のことについて、もう少し聞きたいのですが、元女性アイドルグループSPEEDの今井絵理子がまんまと当選しましたね。
 彼女も島田先生が言うところの飛び道具のひとつだったと思うんですが。

 島田  それこそ最強の飛び道具になるはずであった乙武洋匡くんが五股不倫をやらかして、立候補断念という事態になってしまいましたから、自民党としても彼女や199センチの男をどうしても候補に入れておきたかったのでしょう。
 いわゆる障害児をもつ親を立候補させるということは、そういう人たちに配慮しているというアピールになるとでも思ったんでしょうね。

――テレビの番組で自分の出身地である沖縄の基地問題のことを訊かれて、これから考えますと答えたら、インタビューした池上彰が、「自民党から出馬したのだから、当然、自民党の政策を知っているものと思っていたのでびっくりしました」なんて苦笑してましたけど。

 島田  実際問題、自民党は基本的に全員が党議に拘束されているし、国会の場で何に賛成、何に反対という一覧表を渡されて、そのとおりに回答しているだけなんです。
 要するに数が揃えば、誰でもいいわけで、かつ知名度が高ければ、一石二鳥です。個々の議員の政治的主張なんて無用で、イエスマンの頭数を揃えればいい。だけど、タテマエとしてはさまざまな立場の人がいるというイメージさえ確保していればよいと思っているんじゃないでしょうか。
 単に同調するだけの政治家が増えれば、さらに政治的無関心がはびこるわけですが、それも自民党には有利です。

――こちらの立場で言うと、「障害者をダシにして」などとは大っぴらに批判できないですからね。

 島田  だから、マスコミも彼女の内縁の夫が経営する風俗店で未成年者を働かせていた、みたいな記事で牽制するしかないんでしょう。
 自民党としても、福祉政策への野党の批判や要求に対して「いやいや、私どもの議員の中にも障害を持つ子の親もおりますし」と、うまくかわすための要員として置いておくみたいな一面もあるんじゃないですかね。

――まあ、今井絵理子は置いといて、それにしても昨今のタレント議員の増殖ぶりはどうなんでしょう。
 石田純一は都知事選の出馬を取りやめましたけど、そのうち、堀越学園に政治家コースができるんじゃないかと思うですよね。まずは芸能界で名前を売って、それから政界に進出できます、みたいな。

 島田  ポピュリズムは民主主義の成れの果てです。基本、政治の世界も商品広告の手法と同じです。商品のクオリティよりもイメージやパッケージがものをいう。
 商品広告の手法を最初に政治に導入したのがナチスです。民主独裁はポピュリズムから始まるんですよ。ビジネスの世界では独占禁止法というのがあり、健全な市場原理が働くよう監視するシステムがあるけれども、政治はむしろ独占を目指すんですね。


ここまで「タレント議員」の裾野が拡がったのは、そんなに昔の話ではないはず。いまや政治家になる基本コースは、2世かタレントになってしまった。問題は、それに対して「いかがなものか?」という疑問さえも聞こえなくなったことではないか。これも民主主義の成れの果てなのか?
『筋金入りのヘタレになれ』という島田雅彦に、引き続き話を聞いていきたい<編集部>