SL銀河

 

『銀河鉄道の夜』の世界観と民話の里・遠野のぬくもりに触れる

「SL銀河」(運行会社:JR東日本)

 「SL銀河」は、星座や星宙をイメージしたイラストが車体全体に描かれた、青い4両の旅客車両で編成されている。洒落たデザインが人気だが、元々は北海道向けの客車だったものをディーゼルカーに改造した車両で、動力付きである。 

釜石発の「SL銀河」は、陸中大橋を出発すると難所の仙人峠に挑むのだが、急勾配の上、長いトンネルもあるので機関士にとっては地獄であろう。そこで、少しでも負担を軽減するために、SLと動力付き旅客車両が協調運転して、山越えをする。車内で耳を澄ましていると陸中大橋発車時には、図太いSLの汽笛に続いて、甲高いディーゼルカーのホイッスルも鳴り響く。ちょっと珍しい情景だ。 

「SL銀河」の旅客車は、1970年代後半に造られた車両だが、宮沢賢治が生きた大正時代風のレトロ調に改装している。ボックス席の窓上、網棚の脇には半円状のステンドグラスがあり、また座席背もたれの上は、格子状の仕切りが設けられ、賑やかなデザインでありながら個室にいるような落ち着いた気分にもなる。 

各車両の両端には、ドアやトイレのほか、ミニギャラリーが多い。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をはじめとする著作、賢治が創造した理想郷イーハトーブの解説、天体に関するものなどがある。すべて見て回れば、賢治の世界について詳しくなることだろう。 

4号車(釜石寄り)は座席が少なく、ほとんどがギャラリーとサロンスペース、売店である。セピア調のフォトギャラリーには昔の汽車の写真や当時の風俗写真が数多く展示され、賢治のギャラリーには絵本などの著作が並んでいる。ソファーで寛ぎながらページをめくるのも楽しいであろう。売店には「SL銀河」グッズがぎっしり置いてある。旅客車両の外装にちなんだ青色系のものが多く、どれも洒落ている。


車内での最大の目玉は、1号車(花巻寄り)にあるプラネタリウムだ。乗車したら、すぐに予約を取っておこう。数人が座るといっぱいになる小部屋が暗くなり、天井に『銀河鉄道の夜』のエピソードが映像で紹介される。時折、BGMのようにこだまする汽笛は本物だから臨場感満点だ。10分足らずの映写時間はあっという間だ。


遠野では1時間ほどの停車時間がある。駅前を散策したり、買い物をするほか、ホームで給水や点検をするSLの観察や記念撮影などやることが多すぎてあっという間に発車時間になってしまいそうだ。4時間を超す長旅になるけれど、退屈している暇もないほど楽しい列車旅である。