イラスト/フォトライブラリー

江戸では、指で女の陰部を愛撫することを「くじる」といった。隠語では「指人形」という。

江戸には「足くじり」という性技もあった。英語には該当する単語が見当たらないので、わが国独自の性技といってもよかろう。足くじりとは、男が足の親指で女の陰部を愛撫するテクニックである。

現代の女性に足くじりをすれば、おそらく侮辱と感じて激怒するであろう。「なによ、足であそこにさわるなんて、失礼ね!」
というわけである。感覚の違いはもとより、服装の面からも足くじりは困難である。というのは、現代の女性は下着を脱がさないかぎり、直接陰部にふれることはできない。たとえ親指の先端が届いたとしても、まだ布地でへだてられているのである。ところが、江戸の女が身に着けていた下着は腰巻(湯文字)で、股の奥に足を侵入させれば、親指の先はじかに陰部にふれることができた。

もうひとつの背景に、当時の履物がある。江戸時代の男がはいていた履物は、下駄、草履、雪駄、草鞋(わらじ)など、すべて親指と他の四指がわかれる形だった。それだけに、足指が器用だったのだ。親指を精妙に動かし、陰部をやさしく愛撫することも可能だった。

欧米はもちろんのこと、中国大陸や朝鮮半島、中央アジアの男は、みな靴をはいていた。そのため、親指だけを自在に動かすなどという器用なことはできなかった。そう考えると、「足くじり」はわが国が独自に発達させた、世界に冠たる性技と言えようか。

『開談夜之殿』(歌川国貞、文政9年)には、炬燵(こたつ)で居眠りしている妾に、旦那がそろそろと足くじりを仕掛ける場面がある。その一部を紹介しよう。

旦那は炬燵にはいるや、女の股のあいだに足を入れた。妾が驚いて顔をあげる。
「おや、旦那、いつのまにおいでなさいましたえ。あんまりいい心持ちで、ついとろとろしました」
「そんなら、ちっと、目を覚ましてやろう」
そう言いながら、男が足の親指で陰門をくじる。
「あれ、旦那、およしなさいましな。冷たい足だねえ」
「なに、いま、じきにあったかにならぁな」
妾は足の指で陰部をくじられても、とくに怒ることはない。興奮したふたりは情交に移行する。まだ足くじりをしたことのない江戸の男は、こんな春本を読むや、さぞあこがれたであろう。
「よし、冬になって炬燵を出したら、あの女のあそこを足でくじってやろう。さぞ、よがるだろうな。ふふ、楽しみだ。早く寒くならないかな」

現代ではすでに幻となった性技と言えよう。それとも、どこかに技を伝承している名人が存在するだろうか。