◆自己暗示は、
どこまで効果があるか?

 スポーツの世界でいまや「イメージトレーニング」は、必須とも言えるだろう。トレーニングの方法はさまざまだが、基本的には、「成功イメージ」を抱かせるのが基本になるようだ。
「脳はどこまでコントロールできるか?」(中野信子・著/KKベストセラーズ)では、自己暗示の実験として、社会心理学者のエイミー・カディによる実験が掲載されている。
 実験では、被験者に「強いイメージのポーズ」「弱いイメージのポーズ」の両方をとってもらい、心理学的、生理学的にどのような効果があるかを調べた。
 その結果、自信がない時にあえて「強いイメージのポーズ」をとることで、内観的に変化があり、自身がわいてきたり、自ら喜んでリスクをとるような行動をするということがわかった。
 また生理的な変化として、リスクをとる行動を促すホルモン「テストステロン」の値が上昇し、逆にストレスホルモンであるコルチゾーレのレベルが激減した。
 一方、「弱いイメージのポーズ」をとるとまったく逆の反応が見られた。
 この結果に加えて、ストレスを感じる状況では、両手を大きく広げたり、姿勢を正して背中を反らすなどのポーズを取ると、一定の効果があることがわかった。
 この結果から、カディは、試験や面接前などの緊張する場面では、体を大きく開いてリラックスして臨むことをすすめている。


 ◆テストの点数を上げるには、
 「肯定的」固定観念を持って挑む

 ここでもう一つの実験もぜひ紹介しておこう。
 テストの前に否定的な固定観念、肯定的な固定観念を思い出させた場合に、どのような影響があるかを試した実験だ。
 この実験では、自分に当てはまる否定的な固定観念を思い出させるだけで、テストの点数は悪くなり、肯定的な観念はテストの成績をアップさせた。
 ここで言う否定的、肯定的な固定観念と言うのは、性別、年齢、人種、社会経済的状態のことで、たとえば、「女性は物理が苦手だ」、「日本人は数学が得意だ」などといった情報のこと。こうした情報が、如実にテストの点数に影響したというのだ。
 この実験結果からも、イメージトレーニングの有効性は実証されているが、いかにヒトは心理面の影響を受けるか。その前提として、いかに脳はダマされやすいかということもわかる。
 ただ、そうした仕組みを認識して、それを有効活用しない手はないだろう。
 自分の頭の中にあるイメージを変えるだけでテストの点数がアップするのだから!

 ただし、ここで注意が必要なのは、実は固定観念を完全に払しょくするのはかなり難しいという点だ。
 私たちの脳は、集団や身近な人たちについて無意識のうちに、その特徴を一般化したり、カテゴライズしてしまうという仕組みも一方である。
 したがって、自分の中で意図的にイメージした観念が、それまでの固定観念と対抗するような場面が想像できる。だからこそ、そこにはトレーニングが必要だということもできるのだが。
 
 テストの点数を上げるために、イメージトレーニングに時間を取るなら、もともと勉強した方がいい。
 そんな結論にもなりそうだが、少なくとも、何かに臨むとき、肯定的固定観念を思い出すように訓練して臨めば、否定的固定観念を思い出すよりプラスになるという認識は持っていて損はない。
 こうして考えていくと、成功する人というのは、意識しているいないにかかわらず、肯定的固定観念というものをうまく活用できている人が多いのではないか。脳の仕組みを知って、それをうまく活用としているはずだ。

 いざという時に力が発揮できる人、できない人の差が、こうした実験からも理解できるだろう。