◆大衆が抱くゲイのイメージは両極端

 『薔薇族(ばらぞく)』という雑誌を御存知だろうか。1971年に創刊された「日本初の同性愛マガジン」である。僕は様々な偶然の連鎖の果てに、その編集長職を2011年に引き継いだ。

薔薇族 最新420号 イラスト/いぬお

 おかげさまで『薔薇族』の名は世間に広く知れ渡っている。けれども、その実態を正確に把握している人間となると、ごく少数と言わざるをえない。

   特殊な趣味の愛好者に向けたゲテモノ系エロ本。

  こんなイメージが広く伝わっているのだが、それを広めているのは「現物を一度も手に取ったことのない人間」ばかりである。つまり、偏見や先入観でものを言っているわけですね。

   その手の輩に、『薔薇族』二代目編集長としては言ってやりたいことが山ほどあるのだが、話が長くなるので、それは別の機会に譲る。代わりに今回は、世間が「異性愛ならざるもの」に対して抱く偏見の源泉について語りたいと思う。

   さて皆さん、「ゲイ」という単語から連想するものは何だろう?

   オネエ言葉? はいはい。

   女装? ふむふむ。

   毒舌? あー、なるほどね。

   残念ながら、どれも実態とはかけ離れている。それらは全て「バラエティ番組が発信した、バラエティ番組にとって便利なゲイのイメージ」なのだ。

   ああいう人たちも現実にいないわけではないが、それはあくまでごく一部。

   市井のゲイの大半は、「性愛の対象が同性」という部分を除けば、あなた方となんら変わらない「フツーの人々」なのである。

     悪質な偏見というのは、相手をおとしめるタイプのものだけではない。キラキラした虚像を勝手にこしらえて、それを押しつけてくる「自称・支援者」も困った存在なのである。彼ら・彼女らの描くゲイ像も、かなり実像とかけ離れたものなのだ。

   無理解な世間の犠牲者! …ちょ、ちょっと待って。

   辛い運命と戦う前向きな弱者! …あ、あのねぇ。

   権利獲得に懸命な社会派! …はぁ、そうですか。

   こうしたイメージは、たぶん福祉系の番組だとか雑誌・書籍からの受け売りなんだろうが、べつに我々はナントカ組合の運動員とかではないのですよ。

    自称・支援者が欲する「立派なゲイ」だっていなくはないだろうが、一般的なゲイというのは、そこそこ楽しくやっていて、けっこう不謹慎なものである。まぁ、そういった「支援者の夢を壊すような存在」は見たくないんだろうけど。