『変貌する自民党の正体』(ベスト新書)を上梓。常に第一線のジャーナリストとして活躍したきた田原総一朗氏に話を聞いた。

 Q13.田中角栄氏は、官僚の使い方も上手かったと聞いていますが?

 

 その通り。法律と同じように、彼ほど官僚機構を思いのままに使いこなした政治家は他にいない。党人派の政治家たちは、官僚にバカにされているというようなコンプレックスもあって、人事権や恫喝で自分の思い通りに動かそうとした。
 ところが、田中角栄は官僚を味方につけて政治を動かしていった。どうして彼にこんなことが可能だったかというと、関係官僚の名前を全部覚えていたから。普通の政治家なら「おい」とか「お前」というところを、名前で呼んで仕事をした。それに官僚本人の誕生日から結婚記念日、子供の誕生日まで覚えて、その節目でお祝いを贈るということをした。余談になるけど、竹下さん(登)は覚えられなかったから、有名な「竹下の巻紙」というのを作って、書き記していた。つまり、田中角栄という人は、人心把握術に非常に長けていたんだ。それに誰でも受け入れてしまうスケールの大きさがあった。たとえそれが政敵であろうともね。
 その結果がどうなったか。当然、官僚たちが田中さんを慕い、信頼したんだ。いくら政治家が構想を作り上げて法律を整備したって、実務を行うのは官僚たち。官僚がちゃんと動いてくれなければ、構造は変わっていいかない。世の中は発展していかないんです。官僚たちの信頼を勝ち得たから、都市政策大綱というものを作って、その通りに進めていくことができたんだ。
 今の政権、安倍さんはタカ派でしょ。一方、田中角栄はハト派だった。憲法改正なんてことは一言も言わなかった。以前の自民党というのは、党内にタカ派とハト派の派閥がバランス良く存在していて、党内で活発な議論が行われてから法案を提出し、通していた。でも、今はそれがなくなってしまっているんだ。
 アベノミクスにしたって、金融政策と財政政策は功を奏しているようだけど、これから先に必要な、成長戦略のための構造改革が進んでいない。改革した後、どんな日本にしていくのかという構想が描ききれていないんです。もし、現代に田中角栄がいたら、新たな構想を打ち出して、国民に分かりやすく見せていたはずです。最近、田中角栄ブームが起きて、関連する書物がたくさん出ているのも、今の政治家たちが小さくまとまり過ぎて、構想力というものがなくなっているからだと思いますよ。


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明日の第十四回の質問は「日本の将来を不安視する声が多くなっているように思いますが?」です。