『変貌する自民党の正体』(ベスト新書)を上梓。常に第一線のジャーナリストとして活躍したきた田原総一朗氏に話を聞いた。

Q22.平和憲法公布と自衛隊創設の矛盾について、教えて下さい? 【その1】

 

 それには現在の憲法の成り立ちから考えないといけない。だから2回に分けて話したいと思います。

 旧大日本帝国憲法に代わる新憲法、つまり現行の「日本国憲法」は、GHQが作成した原案に多少の手を加えたものであることは確か。それが「アメリカからの押し付け憲法であると言われる所以です。
 幣原喜重郎内閣が1946年3月に発表した「新憲法改正草案要綱」から「憲法改正案」となり、吉田茂内閣に代わった1946年6月に衆議院本会議にかけられ、国会での審議を経て、同年11月3日に公布された。

 GHQ、つまりアメリカ政府の一番大きな目的は、日本が戦争できない貧しい国に留めること。それに加えて、連合国である米英中ソなど11か国で作る、対日占領政策決定機関「極東委員会」に、日本の劇的な民主化と平和化を示す必要があった。そこで、あの「第9条」が明記されたのです。これは、天皇の戦争責任を問わないための措置とも言われています。

 ただ、当時、日本の占領政策の最高責任者だったマッカーサー元帥は「新憲法の実施に経過に照らして、一両年中に。これを再検討し、もし必要ならば改正することは全く日本国民の自由であると極東委員会は決定した。従って、さらに必要ならば、日本国民の意見を問うために、国民投票その他の手続きをとって然るべきである」という書簡を、47年1月に吉田茂に送っています。マッカーサー自身も、新憲法はあくまでも仮の憲法であり、数年後には改正すべきと考えていたことがわかるんです。

 ところが日本国民は、今まで改正せずにきている。前にも言ったけど、吉田茂をはじめとした歴代に首相たちは、アメリカがやる戦争に巻き込まれないために、9条の改正を行ってこなかった。特に吉田などは正当防衛権まで明快に否定して、軍備を持たないことにして安全保障はアメリカに任せた。そして国勢復興のために産業再興と経済発展を優先させたんです。
 ところがアメリカは、ソ連や中国といった共産圏の国々の極東進出を拒みたい。日本はその最前線。アメリカ軍が全国に駐留したのも、共産国の脅威を防ぐためだった。でも、日本が自力で安全保障ができることも必要だと考えていた。実は実際に当時のダレス国務長官が49年に来日した時には、「強大な警察軍の創設」を提案しようとした。吉田はそれをのらりくらりとかわしながら、再軍備を否定したんです。

 しかし、朝鮮戦争が勃発すると事情が変わる。アメリカは在日米軍4個師団約8万人の兵力を全て朝鮮半島に投入することを決定。そこで「米軍出動後の日本国内の治安を確保するために7万5000人の警察予備隊の設置、海上保安庁の8000人増員などを認可する」という書簡を吉田に送ったんです。

 これもアメリカの言うことだから聞かないといけない。この時点から、政府答弁や憲法解釈の矛盾が生まれてしまったわけですよ。


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明日の第二十三回の質問は「平和憲法公布と自衛隊創設の矛盾について、教えて下さい? 【その2】」です。