公開3日で早くも興行収入10億円超えを果たした、この夏話題の映画『君の名は。』。
監督を務めた新海 誠さんに、映画の見どころや魅力、そして
映画のアイデアに影響を受けた「ある作品」について語ってもらいました!
写真を拡大 ©2016「君の名は。」製作委員会

 

監督が映画のヒントとなった
ふたつの「作品」とは?

 

 心震える映像と繊細な言葉で紡がれた作品で知られる、アニメーション映画監督の新海 誠さん。現在公開中の映画『君の名は。』の主人公は、山深い村に住む女子高生の三葉(みつは)と、東京に住む男子高校生の瀧(たき)。彼らが入れ替わるコミカルな序盤からシリアス方面へと物語は展開していく。喜怒哀楽すべての感情を揺すぶる幅がある物語を作る上で、両者を馴染ませるために苦心した点は?

 

写真を拡大 新海 誠(アニメーション映画監督) ‘73年生まれ、長野県出身。’02年、個人で制作した短編『ほしのこえ』でデビュー。’04年公開の初の長編映画『雲のむこう、約束の場所』、’07年公開の『秒速5センチメートル』、’11年公開の『星を追う子ども』、’13年公開の『言の葉の庭』と作品を発表する度に数多の賞を受賞。国内外で高い評価と支持を受けている。

 

新海 男女入れ替わり物の昭和の名作の多くは「ジェンダー」がテーマになっていますが、元の体に戻るのがゴールだと2016年の物語として共感してもらえないんじゃないか、先が読まれてしまうんじゃないかと思ったんですね。ですから、ドタバタからシリアスに向かうのは既定路線だったのですが、入り口はコミカルでも、物語の出口はまったく違う場所にするということを意識しました。かつ、シリアスなシーンでも笑いから手を離さないようにしようと。馴染ませるために苦労したという感覚はないのですが、今回は107分という上映時間をコントロールし尽くし、ひとつの大きな音楽を奏でるつもりで作っています。

 

 今回の脚本は、『古今和歌集』収録の小野小町の和歌、“夢と知りせば覚めざらましを”にモチーフを得た作品とのこと。そもそも何故、『古今和歌集』だったのだろうか?

 

新海 もともと古今和歌集や万葉集は家にあって、物語を作る時にめくったりしているんです。これはここ数年で身に付いた手法なのですが、古典と言うのは広大な湖のようなものなんですね。で、自分の物語を組み立てるためにこういう要素が欲しいという視点で見ると、ちゃんと秘密を発見することが出来るんですよ。

 

 新海監督は今回の映画を製作するにあたって、実に多くの作品からインスパイアを受けたという。そんな中、影響を受けた作品のひとつとして監督が挙げたのは、五十嵐大介さんの漫画連作集『魔女』だ。なかでもお気に入りは熱帯の呪術師を描いた『クアルプ』という作品だとか。

 

新海 目に見えない世界を描きつつ、最新の装備を持つ傭兵やミサイルといったミリタリー要素も入っている。初めて見たとき、なんてエンターテインメントなんだと圧倒されました。

 

 では、五十嵐さんの作品は、映画『君の名は。』にどのような影響を与えたのだろうか?

 

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