今年3月場所から13勝、13勝、12勝と3場所連続“準優勝”の稀勢の里が9月場所も前場所に続き、綱取りに挑む。横綱昇進の条件は「2場所連続優勝するか、これに準ずる成績」である。2場所は月数で言えば4カ月。稀勢の里の場合、3月場所を条件の起点とすれば今場所で4場所目。つまり、8カ月もの間、ベストの体調を維持し、緊張感も保ち続けなくてはならない。

 そんな綱取り大関について白鵬は「あと2場所準優勝だったら上げてもいいんじゃないの」と私見を述べた。綱を張る者として5場所連続(10か月)で心身ともに調子を維持することが、どんなに難しいことかが実感として分かっているからこその発言だろう。

 しかし、ある元横綱はこれに異を唱える。「5場所連続準優勝というのは、単なる強い大関に過ぎない。横綱になる者は大関の中でも、そこを突き抜けた別格の強さがなくてはならない」。

 9月2日に行われた横審稽古総見では横綱日馬富士と8番取って全敗。内容的にも惨敗と言ってよかった。翌日の二所一門連合稽古では魁聖、豪風と格下相手だったが14番取って圧勝。「修正して元に戻りました」と復調は明らかだった。連合稽古最終日は琴奨菊との三番稽古を8勝3敗で切り上げ「先場所よりは(調整具合は)いい」と笑顔も見えた。

  ただ一門内のある親方は言う。
「綱取り大関というのは場所前の稽古からムードが出てくるもの。でも、稀勢の里の稽古は普段の場所前と雰囲気が変わってこない」。

 今年7月に亡くなった大横綱の千代の富士さんは自身の綱取りを思い出しながら、こんなことを言っていた。
「場所前からアピールできることをやって自分を盛り上げていかないと。稽古がいい内容であれば、新聞もいいことを書いてくれるんだから」。

 こうして“ウルフ”はマスコミをも味方につけて、綱取りのムードを作り上げていったのだった。それに鑑みれば、稀勢の里の場所前の稽古は、相手を蹴散らすほどの圧倒的な強さを発揮したわけではない。チャンスは継続されたとは言え、過酷な状況下での再チャレンジが間もなく始まる。