近い未来に人類は滅びて、ロボットと人類が融合した新種生物「ヒューロ」が誕生する……新刊『意志を持ちはじめるロボット』(ベスト新書)で衝撃的な未来を予測したJAXA名誉教授・中谷一郎先生が明かす、人類が知的生命体に出会わない理由とは?

地球外知的生命体が見つからない4つの理由

 

 SETI(セティ)という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。
 Search for Extra-Terrestrial Intelligence の頭文字をとったもので、日本語に直訳すると「地球外知的生命体探査」ということになります。宇宙のどこかに存在するかもしれない文明を発見しようとする活動です。
 宇宙に向けたアンテナで、知的生命体から発射される電波を探すプロジェクトは、1960年の米国オズマ計画を皮切りに世界各国で数多く実施されてきました。また、電波だけではなく光学望遠鏡を用いた探査も実施されました。
 しかし今に至るまで、50年を超える探査にもかかわらず、知的生命体からの信号は見つかっていません。なぜ見つからないのでしょうか。これにはいろいろな理由が考えられていますが、いくつかの説をご紹介しましょう。


①人類はきわめてまれで奇跡的に幸運な条件下で生まれたもので、広い宇宙にも人類以外の知的生命体は存在しない。

②人類よりはるかに進んだ文明を持つ知的生命体は多数存在しているが、高度な技術で、姿を見せずに人類を監視している―そしていずれ人類が現在の野蛮な時代を卒業して、十分に文明開化したら、声をかけて仲間にするつもり。

③知的生命体は宇宙に数多く存在してきたが、いずれも相互の通信手段を持つ前に滅亡してしまう。

④減衰の大きな電波や光などの遅れた通信手段ではなく、人類がまだ手に入れていない通信手段(たとえばダークマターやダークエネルギーなど?)を用いないと地球外の知的生命体とは連絡がとれない。原始人がのろしで近距離の通信をしていても、海外とは連絡がとれないようなもの。

 ここで述べた諸説の中で気になるのは、③です。人類が電波を通信に用い始めてまだ120年ほどしか経っていません。一方、今から500年で人類が滅びるとしましょう。すると人類が電波を発射する時間は120年+500年=620年です。
 620年は長いように見えますが、天文学的には瞬間に過ぎません。138億年の宇宙の歴史の中で、620年は、わずか1億分の4ほどの時間―0.000004%―を占めるに過ぎません。他の星に繁栄している文明も似たような期間で滅んでしまう。つまり、文明という短い閃光がカメラのフラッシュのように、暗い宇宙空間にときどき輝くだけで、相互にそれが重なることはないという理屈です。
 今の世界の様子をながめると、この仮説は、説得力がありそうなのですが、かなり暗い見通しですね。人類はそんなに長く生き長らえることはないという宣告に等しいからです。
 人々があまり深刻に心配しないのは、数百年スケールで人類の未来を考えることができないからでしょう。ひ孫の世代くらいまでの先が人間の想像力の限界なのかもしれません。それは自然選択という種の保存手段の限界だということができそうです。
 とは言っても人類の叡智を結集して、なんとかヒューロ社会がくるまで生き延びてほしいものですね。そうすれば、人類は自然選択ではなく設計という人工的選択により、長期の想像力を獲得し、300年をはるかに超えた繁栄を続ける可能性がでてきます。
 ただし、人類が数千年、数千万年と生き延びることができたとすると、これはSETIで他の文明が見つからないという事実に反します。数千万年繁栄するような文明が宇宙に数多く存在するなら、文明同士の交信が実現するはずだということになるからです。
 言い換えると、人類がヒューロという新種の生物に進化して長期に繁栄するためには、きわめて特殊な―つまり他の無数の(?)文明では実現していないような―哲学、倫理学を確立して長期的な視野から強い自己抑制を行い、種の保存を図らなければならないということになります。
 COの抑制や、核兵器の廃絶すらこんなに困難なことを考えると、これはおとぎ話に近い妄想になるのでしょうか。