糖質制限は、健康で長生きをするためのひとつの食事療法。充分な知識のない人が気軽に糖質制限に取り組み健康を損ねてしまうのでは本末転倒だ。極端に太っていない人が長生きをするためには、糖質制限よりも大切なことがある――。そう語るのは、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)の著者であり、糖尿病専門医として37年のキャリアをもつ牧田善二氏だ。先人たちにまなぶ健康長寿の秘訣とは、どんなことだろうか。

◆生き甲斐を持つ

 『ブルーゾーン』(※注)で紹介されている長寿者たちは、「もう高齢だから」という考え方をしない。一〇〇歳を超えてもなお、なにか役割を持ち、それをこなしている。
 その役割とは、お金を目的としたものよりも、社会貢献につながるものであることが多い。彼らは、人のためになにかをすることを生き甲斐としている
 とくに、沖縄の長寿地域の高齢者たちは、「朝起きるとき、今日一日を生きる理由付けを、はっきり口にできる」という特徴があるそうだ。自分が社会に必要とされていると感じ、責任を持ってその目的を果たすために、「今日も生きる」ということを、一〇〇歳を過ぎてもなおやっているのだ。
 一方、都会で疲れ切っているビジネスマンは、社会貢献できる仕事を与えられていながら、「今日も仕事をしなければならないのか」とぐったりしている。
 そのくせ、定年退職したら、「会社がなければ自分はどうしていいかわからない」と、しょぼくれてしまう。
 そんな生き方をしていたら、早晩、ぼけてしまうのではないか。
 生き甲斐とは、立派なものである必要はない。「大きなことができなければ意味がない」
という考え方は捨てたほうがいい。
 近所の人が喜んでくれるから庭の花を絶やさない。
 子どもたち相手に得意の英語をボランティアで教えている。
 いつか文学賞をとろうと、小説を書いている。
 どんなことでもいいのである。生き甲斐を持って毎日を過ごそう。

◆人生「なにも心配することはない」 

 

 世界で最も長生きしたのは、一九九七年に亡くなった、フランス人のジャンヌ・カルマンさんという女性だ。一八七五年にアルル地方に生まれたカルマンさんは、あのゴッホが生きている姿を知っていたというから驚く。
 大還暦と呼ばれる一二〇歳を超えた唯一の人物である。一二二歳を一六四日も超えて生きた彼女は、死に至る直前まで肉体的にも精神的にも健常だったという。
 その生活は、決してストイックなものではない。むしろ「好きなように生きた」と言っていい。彼女にはふたつのモットーがあった。それは「なにも怖れないこと」、そして「不平を言わないこと」
 彼女は、オリーブオイルを料理に多用し、赤ワインを毎日飲んだ。
 ショコラショーも毎日飲んだ。ショコラショーとは、フランス語で「熱いチョコレート」つまり、チョコレートを溶かしたホットドリンクのことだ。
 お気に入りの言葉は「楽しいわ」と「前向き」。そして、ユーモアのセンスを大事にしていた。チャレンジ精神も旺盛で、八五歳からフェンシングを始め、一〇〇歳まで自転車に乗っていたそうだ。
 カルマンさんに次いで長生きした、アメリカ人女性サラ・ナウスさんは、一一九歳と九七日を生きた。ナウスさんが生きている間に、二三人の大統領が誕生した。
 彼女は大の野菜嫌いだったが、「それを無理して食べないことが長寿の秘訣」と語ったそうだ。その代わり、好物のチョコレートをたくさん食べた。
 彼女たちの生き方を知って、私自身ずいぶん勇気づけられた。
 病気になったらどうしよう。
 家族になにかあったらどうしよう。
 家賃が払えなくなったらどうしよう。
 いろいろ心配しながら生きてきたが、明日に起きることなど憂慮せずに今日を楽しむことが一番だと考えるようになった。
 そもそも、心配すれば心配したことが起こらないというわけではないのだから、心配すること自体意味がない。
 いつも、「いまを楽しむ」を最優先していこうと思うのだ。

(※注)アメリカの『ナショナル・ジオグラフィック』誌の記者を務めるダン・ビュイトナー氏が、長寿者の多い地域を調査し記録した1冊の本。「ブル-ゾーン」とは、世界でとくに長寿の地域として知られる、4つの場所「イタリアのサルディーニャ島中部」「日本の沖縄北部」「アメリカのカリフォルニア州ロマリンダ」「コスタリカのニコジャ半島」のこと。

『日本人の9割が誤解している糖質制限』(KKベストセラーズ刊)より抜粋>