■突然訪れた先発マウンド

 9月9日、金曜日。
 僕は二度目の公式戦先発をした。前回の先発登板から約3週間。この間、僕は一度もマウンドに上がることがなかった。

 まずコンディションが上がってこなかった。初めての先発のとき、試合中から腕が攣るという初めての経験をしたことを書いたけれど、その後も腕の張りが引かず、よくなったと思ったら下半身に張りが出たりと、なかなか体の調子が戻らない。キャッチボールだけは続けていたが、ブルペンには入れたのは8月30日のことだった。

 ようやくマウンドに上がれる状態になれたのに、今度は芸人としてだいぶ前から決まっていた仕事があり9月1日からチームを離れなければならなかった。

 体のことも芸人のことも自分のことだから、愛媛マンダリンパイレーツには迷惑を掛けてしまったとしか言えない。だから、体も少しずつよくなり、チームに戻ってからはなんとかチームに役立てるようなピッチングを見せたいという思いだった。

 9月7日のこと。
 加藤ピッチングコーチがやってきて、「9日、先発で行くぞ」と告げられた。2日後だ。正直ビックリした。基本的に、先発はもう少し早い段階で伝えられる。
 ただこの時期、それまで素晴らしい活躍を見せていた先発投手陣が、打ち込まれることがあったのも事実だった。前期優勝に続き、後期も首位争いをしていたが、その後のいろいろな計算をしても先発投手が足りないことは想像できた。
 そこで、白羽の矢が立ったのだろう。
 びっくりしたし、時間がないことは不安だったけれど、一方で「戦力」として認められ始めたのかもしれない、という思いもあった。急な登板であっても、谷間であっても、そういうときにマウンドに立つ存在としての役割を担えるのではないか、という思いだ。

次のページ 正田樹投手の後押し