オフサイドはサッカーを「結果」ではなく「過程」を楽しむスポーツに変えた 

 10月は代表戦シーズン。ふだんサッカーを見ない人でも代表戦はチェックするという人も多いだろう。そんなサッカー観戦初心者がつまずくポイントとして「オフサイド」を考えてみたい。TVで観戦中、よしやっとゴールが決まった!…と思ったら審判の旗が上がっていてノーゴールに。判定は「オフサイド」。思わず「なんなの!? “オフサイド”って!」と声をあげた経験はないだろうか。「オフサイドは果たしてサッカーに必要なんですか?」そんな素朴なギモンを『3時間でサッカーの目利きになる』(ベスト新書)の著者でサッカーライター・清水英斗氏にぶつけてみた。しかしそこには思わぬサッカーの魅力が…。以下同書から引用したい。
 

 「サッカーってオフサイドがあるから、難しくてよくわかんない!」 

 昔からよく耳にする、不満の1つですよね。パスを出した瞬間、相手ディフェンスラインの最後尾よりも前へ出ている選手は、オフサイドの反則を取られます。「手を使わずにボールを相手ゴールに叩き込む」という単純明快なスポーツの中で、オフサイドは唯一とも言えるくらい複雑なルール。

 これは相手ゴール前での「待ち伏せ」を禁止するためのルールなのですが、その歴史は意外にも古く、100年以上前から存在します。曰く、「待ち伏せ」してゴールを決めようなんて、フェアじゃない。

 サッカーのもっとも大きな独自性は「中盤」だと思います。ゴール自体がすごく決まりにくいので、その過程を工夫しなければ得点を奪うことができません。昔、ルイ・コスタという元ポルトガル代表選手が「オフサイドのルールをなくせば、サッカーはより攻撃的でスリリングになる」と発言したことがありました。それは一面で事実でしょう。

 オフサイドがなければ、わざわざ面倒くさい中盤なんて作らなくても、相手ゴール前で待ち伏せすればいいのです。間違いなくゴール前の攻防が増えるでしょう。その代わり、守備側はピッチ全体を守らなければならないので、ボールを奪うのが困難になり、ある程度はバスケットのように中盤を捨てざるを得ません。果たしてそれが“サッカー”なのでしょうか?

 おそらくサッカーほど“勝ち方”にうるさい競技はないと思います。勝ったチームを「つまらない」とこき下ろす。そんなことは日常茶飯事。元バルセロナのシャビは、ガチガチの守備固めで勝とうとするチームに対し「アンチフットボール」という表現をよく使います。そこにはシャビならではの中盤の考え方、すなわちゲーム作りの哲学が表れており、「どう勝つか?」に対してみんながこだわりを持っています。それは“生き方”と表現しても過言ではない。

 オフサイドというルールは、サッカーをスコアではなく過程を楽しむスポーツに変えた。僕はそう思っています。

(『3時間でサッカーの目利きになる』をもとに構成)