リレー連載の第1回目のキーワードは、もはや夏の風物詩ともなっている「24時間テレビ」。
毎年、出演者のギャラ問題などで賛否両論を巻き起こしている24時間テレビですが、今回、新たな視点で「24時間テレビが生み出したもの」について、ライターの武田砂鉄さんにご寄稿いただきました。

 ルームシェアする若者たちを追ったドキュメンタリーを観ていた。地方から上京してきたばかりの20代前半の女性は、「食品でもネットでなんでもいいから起業したい」という大ざっぱなドリームを素直に背負っている。手っ取り早く稼ぐためにはキャバクラしかないと面接に出向いては不採用の通知をもらって落ち込む彼女。取材カメラが、これからの具体的目標を記した彼女のノートを、覗き見するように捉える。20近く並んだ項目には番号が振られており、そのうちの「11」「12」にはこう書かれていた。

「11:1ヶ月後までスケジュール一杯!」

「12:アフリカ等、難民問題に対するボランティアに参加」

 食品でもネットでもいいからとにかく起業したい彼女は、1ヶ月後までスケジュールを一杯にしつつ難民問題がらみのボランティアに勤しむ方法を、夜の街でせっせと稼ぎながら探ろうとしていた。たとえば、めっちゃエロいことを考えた1秒後に政治問題を訝しむことができるように、人間の思考とはどこまでも柔軟で飛躍が許容されるものではあるから、スケジュールを一杯にしなくっちゃと誓った後に難民問題を考える彼女の思考は、もちろん認められて然るべきではある。しかしそれが、彼女の中でとっても自然に繋がっているらしいことに、さすがに驚いてしまう。

 マスコミ関係で新卒採用の面接官を担当してきた知人に聞くと、目が泳いでいる男子学生(目が泳いでいる女子学生は殆どいないそうだ)に「あなたはこの会社で何をやりたいのですか」と問うと、目をますます泳がせて「社会貢献です」と答えるのだという。意地悪く「この会社には、すぐに社会貢献と結びつく仕事はないと思うけれど」と返すと、「たとえ最初はそうでも、キャリアを積んで社会貢献をしたいです」とかぶせてくる。ここまでの乱用は珍しいケースとはいえ、マジックワード「社会貢献」は頻度を高めており、マニュアル本の類いに太字で書かれているのか、困った時の「社会貢献」発言があちこちの面接官を困らせている。

 夏の風物詩「24時間テレビ」が40年近く訴え続けてきた「愛は地球を救う」、本当に救ってきたのは「地球」ではなくて「自分」なのではないか。そもそもなぜ走るのかという問いを投げかけてはいけない長時間マラソンと、あるルーティーンに様々な障害を持つ方々をはめこんでいるようにしか思えないチャレンジ企画、余命幾ばくかの設定を好物とするスペシャルドラマ、パーソナリティに届けられる親や友人からの手紙……懸命に生きることを色んな方程式に当てはめて肯定していく企画群は、君がいて僕がいる、僕がいて君がいるという、純愛ドラマのような熱量を繰り返す。